アーリーリタイアをした今年は、今までの人生で出来なかった体験を求めてしています。
そこで今回は、欧米で流行の「インサイダーツアー」に参加しました。インサイダーツアーとは、普段は入れないような世界に、案内人が連れて行ってくれるプライベート感満載の体感ツアーのことです。
いわゆる観光型の旅行に飽きた層が好んで、こうした脱パッケージ、お仕着せ旅からの離脱をしています。
このツアーでは、テーマに基づいて、地元の人たちと旅先の出会いがあり、ツアー中に参加者同士が旅の仲間としてコミュニティになっていくそうです。なんか、ワクワクしますし、興味津々ですよね。
今回は、このブログではお馴染みの仙川書斎で新たに知り合った、柿原さんが運営する「たらくさ(株)」が、二戸市観光協会と一緒に企画した「ほんものにっぽんにのへ テロワールDay」に参加しました。
この「ほんものにっぽんにのへ」は以下のサイトで詳しく紹介されています。
二戸って、どこにあるの?っていう人多いと思うのですが、岩手と青森の県境の岩手側です。
一戸から九戸まであるんですが、どこが岩手県で、どこが青森県かわからない人は、ぜひサイトを見てください。
ほんものにっぽんにのへ|岩手最北の地 二戸のほんものを訪ねる旅 (honmononinohe.jp)
その中でも、今回は「漆掻き」と「漆器」にテーマを当てた「漆TRIP」です。
仙川書斎でいろいろお話ししているうちに、お互い器の取材をしていることに話が弾み、それならと柿原さんが声をかけてくれたのが、今回のツアーです。
漆器に興味があっても、実は漆を取る「漆掻き」がユネスコの無形文化遺産に登録されていることをはじめて知りました。
漆掻きは、夏の間しかできない作業らしく、なかなか見ることは叶わないとのことです。
その貴重な現場を見せてくれるというのです。それも東北岩手の二戸という自分にとっては「未踏の地」で、加えて美味しいモノ満載のグルメ旅と聞いたら、これは行くしかないでしょう!そのときにパッとひらめいた直感に従い、秒で参加を表明しました。
これが本当に大当たりの素晴らしい体験でした。
たらくささんは事前段階から、完璧なアテンドで、Facebookのメッセンジャーで参加者のコミュニティSNSが組まれ、事前に自己紹介、旅のしおりに始まり、準備装備リスト、新幹線の案内まで行き届いた心遣いでした。
ちなみにこちらは、「土地の力を守りながら育てるためのものづくり」をテーマにする「たらくさ株式会社」のサイトです。こちらもリンクを貼っておきます。
以下、次の内容で、今回の「ほんものにっぽんにのへ テロワールDay」のスタディーツアーを紹介していきます。
●スタートは「短角牛」の焼き肉!グルメツアー開始
●旅の全容を理解する二戸の名勝「男神岩・女神岩」
●瀬戸内寂聴のあじさい寺で漆の二戸の発祥を知る
●漆へのパッションあふれる歴史民俗資料館
●浄法寺塗りを復活させた「滴生舎」でお気に入りの漆器を購入
●若女将のパッションがあふれ出る「おぼない旅館」
●ノジュールにもパッションが乗り移る
●朝のブルーベリー摘みで、ブルーベリー・パッションにも遭遇
●本命の漆掻き見学 日光東照宮3寺院11仏閣の修復に挑むパッション
●一番のパッションは「たらくさ」の柿原さん・原山さんのコーディネート
●スタートは「短角牛」の焼き肉!グルメツアー開始
二戸駅に着いた時から、美味しいモノ満載の前評判は証明されました。二戸のブランド牛である「短角牛」の焼肉屋さんがウェルカムランチなのですが、これがなんと780円!
短角牛はなんなんじゃ!っていうくらい旨味があり、ロースもハラミも、ホルモンも美味しい。

●旅の全容を理解する二戸の名勝「男神岩・女神岩」
腹ごしらえができたところで、まずは二戸の名勝「男神岩・女神岩」に向かいました。
こちらの展望台からは、市内一望でした。山間の二戸、馬淵川をはさんだ地形などがよくわかります。
まずは二戸の全体感を知ってもらいたいという企画サイドの意図がハッキリと現れています。
移動中のバスの車内でも、地元情報が満載でした。
●瀬戸内寂聴のあじさい寺で漆の二戸の発祥を知る
次は、あの瀬戸内寂聴さんが復興した天台寺です。
引用「天台寺の名を一躍広めたのが、昭和62年(1987)に住職に就任した瀬戸内寂聴師です。軽妙な語り口で人気を博しており、その法話を聞こうと全国各地から人々が訪れるようになりました」
寂聴さんが集めたというあじさいが見ごろで、参道をびっしりと彩っていました。その数なんと4000株!
手桶水にも素敵にあしらわれていました。これキレイでした。
どこまでも続くあじさいの道。
鎌倉のあじさいより風情があると思いながら、こちらの参道を歩くこと20分、汗だくになりながら天台寺につきました。
天台寺は、神亀5年(728)の開山。聖武天皇から命じられた僧・行基が、桂の木を用いて観音菩薩像を彫り、天皇自らが記した天台寺という額を掲げて開いたと伝えられています。
この時代の北東北の大和朝廷の北限ではないかと思いました。これより北の青森にいくと夷族の感覚が勝りますから、縄文文化と大和朝廷文化のちょうど境目ということですね。
この天台寺が、漆の文化を東北で築いたらしいということで、宝物庫でいろいろな漆に関わるお宝を拝観しました。
●漆へのパッションあふれる歴史民俗資料館
さて、地形と歴史の観点から二戸を学んだあとは、ついにお目当ての「漆ツアー」の始まりです。
まずは二戸と漆の関係を歴史的に学びます。浄法寺歴史民俗資料館へ向かいます。
ここは漆の名品「浄法寺塗り」の歴史が学べる場所です。
浄法寺歴史民俗資料館 (city.ninohe.iwate.jp)
引用(写真撮影禁止でしたのでWEBから)
「古くから漆の産地として知られる浄法寺。当館には漆に関わる資料が多数収蔵されており、そのうちの3,832点が国の重要有形文化財に指定されています」
「現在「殺し掻き」という技法で行われている漆の採取。そのための道具や古い漆器などが展示されています。
■漆掻きの道具
■木地師・塗師の道具
■浄法寺の漆器
■漆蝋・アバギ関係資料
かつてウルシの実は蝋の原料となり、樹液を採ったあとの木は、漁網の浮き(アバギ)に加工されました。ウルシと人との深い関わりをご覧ください」
この浄法寺歴史民俗資料館あたりから、この旅が、日本版インサイダーツアーであることがハッキリしてきました。
インサイダーツアーの本領は「ツアーテーマに基づいて、地元の人たちと旅先の出会う」ことです。
この「出会う地元の人たちのキャラクター」が重要なんですね。
ここの館長の弥生さんがまさにそのキャラクターの象徴。
漆の話、「浄法寺塗り」の話になると、止まらない、止まらない。
暴走寸前の解説なんです。しゃべり続けること1時間ノンストップ!
立ちながら聞くこちらの状況は、お構いなしのあふれだすパッションが、逆に愉快痛快なのです。
本当にこの人「漆と浄法寺塗りが大好きで、人生をそれに賭けてるんだろうなぁ」って、感じさせてしまうんですよ。
この圧倒的なパッションが、インサイダーツアーの醍醐味なんだと、実感しました。そうか、こういう情熱の熱量を体験しにここまで来てるんだと心底理解できました。
●浄法寺塗りを復活させた「滴生舎」でお気に入りの漆器を購入
古い時代の「漆」について学んだあとは、現代の漆器の作り方を学ぶ番です。
一度は絶えた浄法寺塗りを復活させた「滴生舎」で、現代の漆器の作りを教えていただきます。
滴生舎 | うるしの國・浄法寺 (urushi-joboji.com)
ここでも、現役の漆器の塗師さんたちから、圧倒的なパッションを感じました。
まずは、漆掻きの説明をしていただきました。
樹液を集めるために1年で採取した木を伐採するのが「殺し掻き」という方法なのですが、それは15年サイクルで「木をつくる」という考え方なのだという説明があったり、1本の木から1年で牛乳瓶1本くらいしか取れない貴重な漆という話を丁寧にしてもらいました。
そして、漆器のつくり方も、木からうつわの形を掘り出す「堀師」から始まり、うつわに漆を塗る「塗師」の分担作業を詳しく説明してもらいました。
二戸の特徴は、この掻き師、堀師、塗師がひとつの地域に一緒にいて、それが生産方法として連携していたことなのだと、この時に全容がわかりました。
浄法寺塗りの漆器は、6回の下塗りをするそうです。
漆を一層塗り、漆風呂と呼ばれる乾燥室で、温度湿度を管理しながら、乾かす。
そして乾いては削り、乾いては削る。これを6回繰り返すのです。
最後の本塗りの工程は、色漆と呼ばれる色素を加えた漆で黒か赤で仕上げます。
混じりけのない、飾り気のない直球勝負の漆仕上げ。
浄法寺塗りの場合、わざとマットな仕上がりにするそうです。
それが日々使い込むと徐々に磨かれて光ってくる。
それが、一級の証だそうです。その美学、カッコいいです。
ここは、展示販売を行うショールームと漆器製作工房からなっていて、漆塗り作業の様子をガラス越しに見学することが可能です。塗師の人が、浄法寺うるしを幾重にも重ね塗りする丁寧な刷毛さばきをその場で拝見できました。
これだけの量をしっかり展示してくれるギャラリーもないので、じっくり選ばせてもらいました。
こちらで、念願の漆器を購入してきました。滴生舎を卒業して、地元で制作をしている作家さんの作とのことで、モダンなデザインでとても気に入っています。
クリエイター作家の方がその場で、うつわの持つバックストーリーを語ることで、高額な漆器もその場で購入する覚悟が定まりました。
これは、今後のシニア起業に非常に役に立つ経験でした。
実は、柿原さんから起業のアイデアを相談したときに言われていたのは、うつわの作り手の「ストーリー」の大事さでした。
今回、滴生舎で感じたのはそのストーリーを持つ「作り手の圧倒的なパッション」でした。
このストーリーを知る体験こそが、インサイダーツアーの醍醐味でした。
参考:「奥南部漆物語」ムービー
旅の仲間たちも、ここでじっくり検討したうえで、結構奮発した買い物をされていました。
熟慮の上で、一気に覚悟する姿をじっくりと拝見しました。みなさん、かなりの目利きぶりでした。
● 若女将のパッションがあふれ出る「おぼない旅館」
これで一日目のスタディーツアーが終了です。
このツアー中、一番熱心にメモを取っていた小柄な女性が、これからの主役になります。
実は地元、金田一温泉郷のおぼない旅館の若女将・大建ももこさんだったのです。
金田一温泉郷 | ほんものにっぽんにのへ (honmononinohe.jp)
このビデオで登場するおかみさんこそ、ご本人です。
普段は旅館の仕事で外に出れないので、このスタディーツアーに参加して、一気に地元のネタを学ぼうと覚悟して参加されていたとのことでした。
この若女将夫婦の「パッション」が、おぼない旅館にチェックインしたこの後、爆発します。
おぼない旅館の件は、これだけでブログ記事が3つくらいかけるんですが、とりあえずハプンした順に整理します。
1.田舎気分を満喫したゆる湯の温泉
上記で紹介したビデオでも映像がありますが、このぬる湯が体に優しくて、もうずー--っと浸かっていれるのです。ここ夕暮れに待ったりするには最高でした。夕、夜、朝と3回入浴しましたが、しんみりした時間が流れてました。
2.おぼない旅館の「まるごとテロワール膳」
まず、おしながきが若女将の手書きです。この日はテロワール(地元産)にこだわる特別料理で、画面いっぱいに品数が書かれています。
運よく、鮎のシーズン、真っ盛り。
解禁直後の馬淵川の若鮎をなんと、お刺身と塩焼きでいただきました。
アユの刺身は人生でも初めてでした。苔の新鮮な匂いを感じるさわやかな味わいでした。
そしてこの日のテーマでもある漆器で供されたご膳。
南部藩の武家ご用達の「侍の湯」の伝統とのことで、立派な津軽塗の膳で、贅沢にいただきました。
我が家の塗り箸がまさにこの模様なんで、なじみがあります。
地元産が続きます。ホタテと海老のバター焼き。
郷土料理のひっつみ鍋。
「ひっつみ」は小麦粉をこねて薄く伸ばしたものを手でひきちぎって(ひっつむ)、野菜と一緒に煮込んだ鍋料理で、南部藩の統治範囲に広がる料理だとのことです。
そして、メインがなんとも贅沢な3種のお肉料理。「短角牛」と「三元豚佐助」、それに加えて「菜彩鶏」という、いずれも地元名産の牛・豚・鶏の揃い踏み!
この3種が揃う土地はさすがにそうそうないと思います。
「こんなのズルいだろ」って、秋田大館から参加されていたメンバーが言うくらい、二戸の豊かなグルメ事情を見せつけられました。
シェフをしている主人の旦那さんが、お昼の焼き肉を聞いて、冷製系にしてくれたとのことで、東京や仙台の西洋料理で学んできた技を感じさせる素晴らしい火入れでした。
これには感動、シェフありがとうございました!感謝します。
さて、もちろんお酒!
これ自分は得意分野じゃないのですが、どうも「南部美人」という幻の名酒の里なんですね。
函館から来られたお隣の安立さんがお酒に詳しくて、「南部美人」のドキュメンタリー映画を見ているとのことで、いろいろ教えていただきました。
米造り米の「ぎんおとめ」を使った特別純米から、梅酒までいろいろ取り揃えてくださいました。
今日は、酔ってもいいやと思って、開放して、おいしくいただきました。
もちろん酒器も、漆器でいただきました。
日本酒の香りがポワーっとひろがって鼻を駆け抜けていきます。
正しいうつわを、正しく使うと、五感が、正しく反応するものなんですね。
この膳やうつわ群は、大規模観光客ブーム時代は、数が揃わなくて蔵の中で眠っていたそうです。が、最近、若旦那夫婦の時代になって復活したとのことで、地元産にこだわる今回のツアーにとっては行幸でした。
3.宴会ではコミュニティがどんどんつながる。
このツアーの魅力は、こうした旅館側の饗応だけでなく、旅人同士の触れ合いにありました。
この日、テーブルを囲んだお二人は、函館からのご参加。田柳さんと安立さんのお友達同士。
そこに一人旅の私がジョインさせてもらったのですが、事前に立ちあげてくれたLINEグループで自己紹介も済んでおり、プロフィールも公開されていたので、いきなり、前職の教育ICT関係の話を切り出され、「えっ!そっち関係にお知り合いがいるんですか」みたいな会話でいきなり盛り上がりました。
聞けば、アーリーリタイア組でもあったり、地元復興に興味が共通していたりで、話が弾む弾む。
函館、最近「燃えよ剣」でマイブームが来ていたので、興味津々で聞き込んでしまいました。
趣味、興味の教養レベルが一致していることもあり、久しぶりに最高に知的な会話を楽しませていただきました。
このメンバーをテーブルメンバーに組んでもらった柿原さんたちに感謝します。
そして、この日、参加してきた地元の観光協会の方々ともお酒を酌み交わし、今日のインサイダーツアーの感想などを語り合いました。
そしたら、急にカーリングの話になりました!
二戸出身の2014年ソチ冬季五輪カーリングに出場した苫米地(とまべち)美智子選手の話でまさかの盛り上がり。東北のカーリングと言えば二戸ということで、近いうちにカーリング体験させてもらう話に発展してました。
カシオペアカーリング協会-岩手カーリング発祥の地、二戸のカーリング協会です。 (cassiopeia-curling.com)
さらに、前述のももこ若女将の意外な才能に話が及び、室内に飾っている金屏風などが素敵だとほめると、なんと「金屏風の絵は、ももこさんが描いている!」って話になって、えっ!えっ!えっ!って目が点になりました。全部、リデザインしたんですって! 岩絵の具なのかと思って、よく見たら、本当に水彩画で上から書いてました(笑)。
これまたももこさんのパッションが爆発のエピソードでした。
4.夕食会のあと、なんとグランピングが始まる!
これはまったく想定外だったのですが、この夕食会の後に、旅館に今年作ったグランピングエリアで焚火しましょうということになり、温泉宿のグランピングという贅沢な時間を過ごしました。
夕食会はコロナ禍ということもあり、テーブルから離れることができなかったのですが、このキャンプファイヤーでは、ほかの参加メンバーに加えて、料理をつくってくれた若旦那や、さらにには地元の教育委員会の方も参加して、みんなで焚火を囲んでお話ができました。
キレイな星空と焚火の炎というこれ以上ない贅沢、ゆるキャン的なまったりした時間を過ごしました。
聞けば、コロナで大変な時期に夫婦二人で話し込んで、ここをより改革していくためにグランピングエリアをDIYしたそうで、これまたとんでもない「パッション」を見せつけられたのです。
夫婦で1枚のデザイン画を描き始めて、少しづつ実現していったとのことで、その間に第2子出産とか話聞くだけでとんでもない夫婦なんですよ。これは本当にこの人たちLifeshifterだって感動しました。
4.おぼない旅館の驚くべき別の顔 ハイキューの聖地だった!
これだけでも、もうおなか一杯のエピソードなんだけど、さらに判明したのは、この旅館はなんと漫画「ハイキュー!」の聖地としてマニアの中で有名な旅館だったのです。
チェックインの時に高校の団体がいっぱい泊まってるなぁって見てたら、全部どこかで見たことある名前で、あっこれハイキューの高校ばっかりだって!
ももこさんに聞いたら、実は、ハイキューの作者がこの地の生まれで、漫画上の舞台は、宮城・仙台ってことにしてあるけど、実際のロケ場所は全部、故郷の岩手二戸・金田一温泉でエリアなんですと。
この旅館も、漫画上は全国大会で宿泊する東京の旅館で登場しているのです。
これに気づいたファンたちが宿泊するようになり、グッズを置いていくようになったとのことでした。
それに意気を感じた、ももこさん夫婦が、それならと、ファンが喜ぶようにいろいろな工夫をして、果ては看板までファンが来るときは架け替えるとう暴挙に出るくらい(笑)のマニアへの神対応をしてきたらしいです。
いつしか「ハイキュー!」ファンの中では世界に名を轟かせる聖地扱いになってました。いまや、一部屋をつぶして、「ハイキュー!部屋」としており、窒息しそうなグッズの嵐になってます。
ここには、なんでも記帳できるノートがあるのですが、日本語だけじゃくなく、英語からハングル、または知らない文字で熱心にハイキュー愛が語られてました。
この日も一組、ご家族が「ハイキュー!観光」で宿泊されており、我々とは別のパッションに囲まれて幸せそうにエンジョイされてました。
「パッション」を巡るこの旅の、また別の側面を感じました。
おぼない旅館のエピソードは、もう面白過ぎて、いっぱい書きたいけど、本筋外しそうなんでこれくらいにしますね。
●ノジュールにもパッションが乗り移る
ここから、また新たなキャラクターで観光協会の橋本さんが踊り出します。
昨晩、カーリングネタで盛り上がった二戸カーラーです!#カーリング沼 (笑)。
まず取り出したのが「ノジュール」です。この言葉、聞いたことがあっても、意味はまったく知りませんでした。
「団塊 – Wikipedia 引用:団塊(だんかい、英: nodule[1][2]、concretion[1])とは、地質体中に見られる、周囲と成分の異なる塊。内部に化石を閉じ込めていることがあり[4]、その場合には周囲の母岩よりも硬い団塊が地面の圧力に耐え、内部の化石は立体を保っていることが多い。従って化石採集の際には、雨や川による浸食を受けて露頭から落ちた団塊を探すという手法も採られている」
海が地殻変動で突然隆起してできた二戸はノジュールが多く発見されることで有名だというのです。
そしたら、本当にこの日、朝の散歩で訪れた河原で、ノジュール集めをしている老人に遭遇。
どやどやみんなで押しかけて、その人からノジュール愛をお聞きしました。
ここでも「偏愛パッション」があふれ出てました。
●朝のブルーベリー摘みで、ブルーベリーパッションにも遭遇
満腹の朝食の腹ごなしということで、近くのブルーベリー園に朝摘みに行ってきました。
こちらの農園主の中里さんも二戸・金田一温泉の復興メンバーとのことで、他の方に負けないブルーベリーへのパッションを発揮してくれました。
今年は天候が不良で、多すぎる雨と熱すぎる夏で、例年のように収穫が安定してないと言われてました。
気候温暖化の影響をまず直面するのがこうした農業の方々なんだと再認識しました。
はじめてのブルーベリーつかみ取りは、冷えてないままに食べるイチゴ狩りよりも、よほどおいしかった。
特に中里さんに教えていただいた食べ方が素敵。
一粒ずつ食べるより、品種を混ぜて、熟した実と若い実も手のひらで混ぜて、一気に口に入れると複雑な味わいになるという方法が、絶品で、過去に食べたブルーベリーの総量くらいは、摘んでは口に運ぶを繰り返していました。
中里さんのパッションに感染して、私もブルーベリーのファンになったようです。
柿原さんと原山さんが用意してくれた炭酸水、レモンエキスなどで、その場でジュースにしてくれたりして、みんなで暑さを忘れて、つかの間の農業体験を満喫しました。
おみやげになんとリンゴのジャムまでいただいて、大満足の朝の散歩でした、
●本命の漆掻き見学 日光東照宮3寺院11仏閣の修復に挑むパッション
二日間のメインイベント、漆の森の漆掻き見学です。
漆の森は、二戸市の漆課さんの案内でその現場をみせていただきました。
斜面が穏やかな林のなかで、大掛かりに漆の原木が管理されています。
引用:浄法寺漆を訪ねる | ほんものにっぽんにのへ (honmononinohe.jp)
「浄法寺エリアの中心部に位置する漆の森。今でもこの森で漆掻き師たちが仕事をし、この地域で採れる漆は、柔らかさ、のび、発色など、品質の高さが評価されている。日光東照宮陽明門や二荒山神社など日本が誇る世界文化遺産の修復にも用いられている」
その山を毎年、掻き師の人たちが、今年分という形で原木を契約して作業する形式とのことで、掻き師ごとに木を買って現場を組んでいきます。
人によってかなりやり方は違いがあるようで、生産量をあげるために6本くらいに梯子をかけて、1本から2段階で掻く達人もおられるとのことで、ここもひとつパッションを感じました。
この木組みしているのは、以下のビデオに出てくる浄法寺の掻き師のレジェンド竹夫老名人だそうです。
いまやこの人くらいしかこの方法でやってないらしいです。
この日、見学に応じてくださったのは若い女性掻き師の長島まどかさん。
地域おこし協力隊として岩手県二戸市に移住し、「漆掻きで食べていく」と定住を決意。
浄法寺漆の漆掻き職人として独立されました。
いまやその技が認められて、日光東照宮の修復のための漆として使用されるまでになっています。
漆を書き出す作業は文字通り「一滴、一滴」のイメージでした。
漆の木に一本ずつ傷をつけては、そこから滴り出る樹液のひとしずくをスッと掻きだして掬い上げる。
炎天下、朝の6時から夕暮れまで、ずっと外で、それも一人だけで作業を続けるそうです。
お話しお聞きするとまさにパッションのカタマリ。これこそ「ノジュール(団塊)」なのです。
自分の漆が日光東照宮の陽明門の修復に使われていることを家族が知って、
たまたま甥っ子が修学旅行に行ったときに陽明門を見て、「まどかちゃん、スゲー!」と言ったというエピソード。
今の夢は、年ごとに行われる日光3寺院11寺社の修復をすべて自分の掻きだした漆で満たすという途方もないもので、そこに、「ぶれない信念」を感じました。
まさに、漆へのパッションを巡る旅の締めくくりにふさわしい人物でした。
夏は、こんなに休みなく働くけど、冬には漆の仕事はないそうで、猫とこたつで丸くなるだけという、かわいらしい話も聞けて、ほっこりしました。
●一番のパッションは「たらくさ」の柿原さん・原山さんのコーディネート
今回の「ほんものにっぽんにのへ 漆TRIP」は、まさに人々のパッションを感じさせる熱い旅でした。
漆や地元に愛を感じ、それを守ろうという志を大事している「気持ちのいいひと」たちに出会えて、それを理解できる同好の士でツアーを語り合いながら回れたことは、人生観をバージョンアップするような体験でした。
実際、こうした「ひとを巡る」旅は、お仕着せのツアーと違って、そのコーディネートが全てだと思います。
このクオリティで、パッションを持った人々を巻き込んで、ここまで完成させたのは、「たらくさ」のお二人である柿原さんと原山さんの「パッション」の賜物でしょう。
インサイドツアーとはなにか。どうすればインサイドに感激してもらえるのか。それは、これから世界中の多くの人が考え出していくのだと思いますが、新しい旅の形として確かに、成長していくのでしょう。
自分のなかでも、今回の旅の経験で、人生の大きな一歩を新たに踏み出させていただきました。
ありがとうございました。
はじめての二戸、大好きになりました。