【体験談】アーリーリタイアしたらしたいこと 関心の輪としての「欲望の資本主義」

元旦の夜に毎年、自分に対する1年分の宿題が提出される。
NHK-BSが2017年から巻頭言として継続的に放送している「欲望の資本主義」である。
番組のテーマは「やめられない止まらない欲望の資本主義」
成長、分配、生産性、循環。議論百出の中どこへ向かう?世界の知性と考える異色教養ドキュメント」である。

 

とても特殊なフォーマットで、前回以前の番組と新規撮影部分を組み合わせ、全体がゆっくり進化していくというflowの時代の象徴のようなスタイルを保っている。
哲学から経済学、ビジネス最前線など重量級なエッセンスが満載なので、リアルタイムで視聴せず、正月3が日を費やして少しづつ消化するように心がけている。

今年はコロナ以降の取材が多く入り、とても充実した内容だった。

「欲望の資本主義2022 成長と分配のジレンマを越えて」 – BS1スペシャル – NHK

2022年版を大きくまとめると以下の内容になる

・パンデミックで世界中の中央銀行が財政出動した事の余波で、ゾンビ企業が多発している。この借入金による歪な分配は、とても危険なバブルを生んでいる

・政府と中央銀行による緊急介入は、人々に「危機になれば必ず国が救済してくれるという幻想」として広がっている。
こうしたケインズ的救済の常態化は「成長幻想に侵されたブレーキなき危機的状況」だといえる

・現在の世界情勢は1970年代と酷似している。当時のローマクラブによる「成長の限界」宣言と京都議定書に始まる気候変動対策、公害問題と地球環境問題、分断の指摘とグローバル化などの相似が語られた。
そうなると次に来るのは、オイルショック並みのバブルの大崩壊とスタグフレーションだという予測だ。

・更に今後起きる人新世の危機が慢性的なものだと考えれば、「パンデミックは予告編、今後の連続的な危機のデモ版」でしかない。
今回のような緊急事態に対する国家の市場介入は何回出動可能なのか?
これは慢性的な危機に対する有効策ではない。

・気候変動という人新世の慢性的な危機に対して有効なのは、求道学で自分が主張してきた「前代未聞の事態に対する解決策の模索」だ。

・対立軸は政治的システムではない。
失敗への批判を含めて討論できる多様性や自由であり、夢語りするような共産主義ではない。共産主義は全体主義化しやすく、批判を禁じる闇を持つ。

・前半の白眉は、オックスフォード大のケイト・ラワースの「ドーナツモデル」だった。それは従来の直線系経済モデルに対する「循環型経済」の提唱だ。

・生産ー使用ー余剰品の廃棄という20世紀モデルでは、地球がもうもたないのは自明。
そこで地球の許容限度内で全ての人々のニーズを満たす方法を模索するという案である。

・さらに模索すべき「人新世の危機に対応する持続可能社会」のモデルとしてスウェーデンを上げた。
それは「捨てる美学を持つ福祉国家」だ。

・スウェーデンは競争力を失った企業を救わない。その代わりに首を切られた労働者への再教育と雇用の流動性を担保する。そして生まれるダイナミックな競争力で国家としての生産性を向上しつつ、その余剰で高い福祉を実現する。

・このスウェーデンのダイナミック福祉国家を支えるバックボーンは、積極的労働市場政策と呼ばれる「レーン=メイドナー・モデル」である。

・その国家施策はシンプルで、企業に対しての年度別一律の「連帯的賃金」を実施させるだけ。重要なことは、この負荷に耐えられず倒産する企業を救わないこと。逆に倒産で失業する人々を救う。そのために国家は、再教育と雇用の流動性を支える仕組みを徹底する。

・「捨てることで社会全体の競争力を向上」させる、求められるのは「捨てる美学」である。

・30年に及ぶ日本の停滞を再始動させるヒントは、こうした市場経済による競争力と社会福祉を組み合わせるシステムで、それは資本主義でも社会主義でもない新しい国家制度だ。

各々の章を図解してみた
参考 1冊1P 欲望の資本主義2022 成長と分配のジレンマを越えて|太泉  |note

さて問題は、「これは自分が影響を及ぼせる範囲を越えた課題」だということだ。

知識は力である。こうした社会課題を知ることは大事だ。でも、そこから自分がなにを行動するかが重要なのだ。

だから、この番組は「自分に対する1年分の宿題」になるのだ。

こうして番組に教えてもらった課題に対して、しっかりそれが「関心の輪の最大領域」であること認識するべきだ。
そして、それに対して、自分が影響を及ぼせる範囲の活動を見つけていく。それが影響の輪の活動だ。

すべきことは、なるべく影響の輪を拡大して、関心の輪に近づけていくこと。
それが「7つの習慣」の教えだ。この教えを25年忠実に実行してきた。

今でもその努力が少しづつでも実際に社会を変える活動になると信じている。

特に、早期退職して、Microsoftという大きな影響の実行力をなくし、今年から「自力」だけがすべてになる。
影響の輪は過去最少範囲になったことを強く自戒しなければならない。

去年なら政府を動かし、4300億円規模の助成金を供出させる活動ができた。
そんな前代未聞の活動は、個人の自力では無理なのだ。
それが現実だとしっかり認識することが必要だ。だからこそ、今年は、この欲望の資本主義をよくよく観察して、この情勢の何に対して、どのように自分が行動していくかを考えていきたい。

そんな強い覚悟で今年の番組に向き合ってみた。


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