【転職】45歳以上のFIRE志望者が年収を2倍にする方法 40代・50代の外資系企業への転職 いまの仕事を辞めたあと

 

まとめ

 

FIRE (Financial Independence, Retire Early)志望者とは、早期に経済的自立を目指して働く人々のことです。FIRE志望者が早期リタイアするためには、なるべく早く必要な資産を貯める必要があります。その手段には、資産形成や副業などの数ある選択肢がありますが、最も重要な方法は「リタイアする前の給与をいかに効率的に上げるか」になります。

しかし、日本の企業では、順調に出世していないと年齢とともに給与が減少する傾向があり、資産形成が難しくなります。また、早期リタイアというFIRE特有の価値観と齟齬が生じる場合も多いです。

そう考えると「外資系企業への転職」は、年収を上げるための有力な選択肢の一つになります。特に外資系企業は日本企業に比べて、転職の条件が厳しくなる45歳以上にとって、年齢に関係なく能力や実績を評価してくれる場合が多く、年収を上げるチャンスがあります。またFIRE志望者の価値観やライフスタイルに合う柔軟な働き方やキャリアパスもあります。

そのため、この記事では、45歳以上の方に向けて外資系転職について、重点的に紹介します。

 

アジェンダ

・経済的自立のための収入UP活動

・<実践編>52歳で外資系IT会社に転職した男がしたこと

・外資系への転職 ジョブ型雇用を知る

・英語できないから外資系は無理か?

・外資系企業が欲しい「スペシャリスト」になる

・転職市場で目立つ「セルフプロデュース」ができているか?

・ジョブ型雇用とヘッドハンターの関係

・外資系が使用する「Linked-in」にエントリーする

・ブループリント=「人材採用枠」を意識する

・最重要はリスキリング「学び直しによる セルフマネジメント」

・自分の弱みを徹底的に分析して「スキルマップ」にする

・不足しているスキル・キャリアを身につける

・スペシャリストになるコツは、会社のためだけに動かない

 

経済的自立のための収入UP活動

 

FIRE(Financial Independence, Retire Early)の前半部は、「Financial Independence:他人に人生を左右させない自由、会社に依存しない経済的な自立」という意味です。これは「非雇用者を目指す活動」とも言えます。

多くのFIRE指南書は、非雇用者になるために、収入を貯蓄や投資で増やしたり、生活費を削減したりすることで支出を減らすことを提案しています。しかし、実際には、経済的な自立を早めてFIREを成功させる最も簡単な方法は、いきなり非雇用者になることではなく、雇用者の間にできるだけ収入を高めることです。

年収を上げるための一般的な方法としては、以下のものがあります。

①現在の会社で昇給する

②副業・併業を始める

③転職をする

特に、③転職は年収を大幅に上げる可能性があります。転職をして、年収が上がれば、貯蓄や投資に回せる資金も一気に増えます。

FIRE指南書の中で「年収を上げる転職」が欠落しているのは多いのは、おそらく、書いている作者自身に経験がなくて、具体的にわからないからでしょう。さらに日本型雇用感覚では、対象読者層の40代以上の転職は「年収が下がる」イメージはあっても、「年収を上げる」活動にはつながらないと考えているから、具体的な記述ができないのだと思います。

 

年収を上げる転職は、50代でもチャレンジ次第で可能です。年齢ではなく、挑戦するかどうかが問題だと私は思います。

年収を上げる転職の近道は、外資系企業への挑戦です。コンサルティングファームや金融・投資系の外資系企業、GAFAMなどのグローバルIT企業は、高年収の転職事例としてよく知られています。しかし、多くの日本人勤労者は、これらの外資系企業への転職は、自分のスペックに合わないと思っています。特に45歳以上になると、さらに難しいと感じて、挑戦を諦めてしまう人が多いでしょう。

私は、純日本企業のパイオニアで30年勤めた後、52歳で日本マイクロソフトに転職しました。その結果、年収は2倍になりましたし、仕事のやりがいや自由度も高くなりました。この記事では、私の経験をもとに、45歳以上のFIRE世代が外資系転職で年収を上げるために知るべきことや気をつけるべきことを具体的に紹介します。

「45歳以上で外資系企業への挑戦は無理だ」と諦める前に、このブログを読んでみてください。そして、自分にとって本当に「絶対に無理」なのかどうか考えてみてください。

 

<実践編>52歳で、日本型企業から外資系IT会社に転職して、年収を2倍にした男がしたこと

資産運用の話から始めましょう。私は将来FIREするために、年率115%の理論を立てて、若いときから実践してきました。この理論は、104%程度の投資運用益と貯蓄の組み合わせで、「5年で資産を2倍にする作戦」というものです。500万円を5年で1000万円にし、次の5年で2000万円にし、15年後に4000万円にするという流れです。ここまでは投資で損失する時期もありましたが、なんとか乗り切りました。

興味のある方は、参考記事をご覧ください。

参考記事

アーリーリタイアを目指すなら 資産を「年115%」で増やす ゴキゲンLifeshift術 – ゴキゲンLifeShift (gokigenlifeshift.com)

しかし、実際には、50~55歳の最終コーナーに差し掛かったときに、「5年で2倍の作戦」を継続することは不可能でした。考えてみてください。50~55歳のわずか5年間で、5000万円を1億円にするのは誰にとっても難しい課題です。どれだけ支出を減らしても無理です。そこで投資のリスクを高めて、利率の高い商品に手を出そうかと思いましたが、リスクを高めれば高めるほど、損失する可能性が増えます。

FIRE志望者にとってハイリスク・ハイリターンな投資は巧妙な罠と同じです。25年間もうまくやってきた投資運用を一気に「ギャンブル」にして、すべてを失うことだってあり得ます。

そこで私は、転職で年収を上げることにしました。104%のローリスク投資手法は変えずに、基本給を増やして貯蓄額を増やし、年率115%の目標を達成しようとしたのです。

元勤めていた電機大手企業では役職定年があり、55歳で役員にならない限り大きな昇給はありませんでした。迷った末に、事業部長の地位を捨てて、52歳で初めてグループ社外への転職を決め、思い切って外資系企業に挑戦しました。結果的にはそれが予想以上に成功して、年収を2倍にして、念願がかなってFIREに到達しました。

このブログでは、その実績を振り返りながら報告します。

 

 

外資系への転職 ジョブ型雇用について

転職や人材採用の形態は、大きく分けて2つのタイプに分類できます。

・メンバーシップ型雇用:まず人材を確保してから、適切な仕事を割り振る雇用
・ジョブ型雇用:必要な仕事の職務内容に合わせて、最適な人材を採用する雇用

簡単に言えば、日本企業のメンバーシップ型雇用は「人に仕事を与える」、外資系企業のジョブ型雇用は「仕事に人を当てはめる」という考え方です。この違いは、募集要項にもはっきりと現れます。日本企業は、新卒入社が主流で、その際には人材条件を提示しますが、基本的に「○○年度 四年制大学卒」程度の情報しか示しません。採用基準も外部から見えにくく、内部では以下のようなあいまいな項目が並んでいます。

 

2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果 (keidanren.or.jp)

 

日本企業の中途採用においては、これに加えて職種における経験年数や適用基準が示されますが、新卒者を中心とする年功序列の枠組のなかに組み込まれるため、スキルよりもその企業が持つ体質や特色への適応性や人柄が重視されています。人を集めてから時間をかけて、仕事を創り出す日本型経営の現れだと思います。

 

外資系企業への転職におけるポイント ジョブ型雇用には詳細な「Job Description」が必須

 

外資系企業では、ジョブ型雇用の採用基準として、詳細な「ジョブ・デスクリプション」が用意されています。

ジョブ・デスクリプションは、地域、Job Profession、Discipline、Role、Type、Level of Educationという項目で区分され、それぞれで検索できるようになっています。Job Professionは、日本の職種に相当するものです。Disciplineは、職種をさらに別の観点から分類したものです。

これら以外にも、職務を様々な角度から分析した世界共通の規定があり、募集する職種を細かく定めています。

 

ちなみに、日本マイクロソフトのジョブ・ディスクリプションのページを引用しておきます。

職種一覧 (microsoft.com)

 

ちなみに私が採用された職種のジョブ・ディスクリプションをご紹介します。

Solution Area Specialists (Education) in Tokyo, Tokyo-to, Japan | Sales at Microsoft

 

引用

マイクロソフトは日本の教育市場に対して、総合的な教育ソリューションを提供しています。

研究機関・大学・高等教育機関・さらには地方自治体に属する小学校・中学校・高校に対して、Microsoft 365 Education、Microsoft Azure を主体としたクラウドサービス化が進み、セキュリティ対策、ローコード開発での教職員の働き方改革、教育DXのニーズが高まっています。
本ロールは、主にM365 Educationを中心としたモダンワークソリューション、およびPower Platformでのローコード開発により、教育機関へのデジタルトランスフォーメーションを推進していただきます。
Microsoftソリューション、ローコード開発のご経験、かつ教育市場に熱意のある方からのご応募をお待ちしております。我々と一緒に、教育業界に変革を起こしましょう。

 

以降に、職種に求められるスキルが「Responsibilities」が規定されます

Sales Execution 6項目

Scaling and Collaboration 2項目

Technical Expertise 3項目

Sales Excellence 5項目

職務経験などの「Qualifications」が以下のように規定されています。

Preferred Qualifications

  • 5+ years of technology-related sales or account management experience.
  • 3+ years of solution or services sales experience.

これは、ジョブ型雇用の現実です。マイクロソフト株式会社日本支社は、2000人の労働者にこの職務基準を適用しています。給与もこの基準に沿って決められます。つまり、年齢や性別に関係なく、職務基準をどの程度満たしているかが評価の基準になるのです。同一労働、同一賃金という観点から、「平等」な制度と言えます。

しかし、日本企業でジョブ型雇用に移行しようとする動きは、単なる流行に過ぎないと思います。人事制度を根本的に変えなければ、うまくいきません。その証拠がこのジョブ・ディスクリプションです。全職員の業務をここまで詳細に規定できる人事部は、日本企業にはほとんどありません。人材の流動化と人事制度のグローバル化は、大きな課題です。

一方、転職希望者や45歳以上の人にとっては、チャンスです。日本企業では転職が難しくなる年齢でも、外資系企業ならスキルが条件を満たしていれば採用されます。自分のスキルに自信を持って挑戦しましょう。門戸は平等に開かれています。

 

外資系は「英語できないから無理!」・・・その躊躇は必要か?

 

次に、外国語コミュニケーションの問題が転職検討者の勇気をくじくかもしれないと思います。その点についてレポートします。まず、外資系企業には2つの役割があります。

1.海外の本社・スタッフと日常的にやりとりする役職

2.日本の営業先に海外の製品を販売する役職

実際には、外資系の仕事でも外国語メインの役職は少ないです。募集要項の中で、外国語交渉が必須ではない職種も多くあります。ただし、この件に関しては甘い期待を抱かせるつもりはありません。事実をお伝えします。外国語ができないと本社交渉が自由にできないので、管理職での採用は難しいでしょう。特に英語ができない人が経営陣に採用されることはほとんどありません。

しかし、ご安心ください。今話しているのは「年収を上げる転職」ですよね。外資系企業では経営陣や管理職でなくても、年収を上げることは可能です。日本企業とは違って、人事的に出世する方法と年収は別の話です。外資系企業への転職ではそれを強く意識してください。

 

転職において英語スキルはマストではない。ただし・・・

 

私は英語が得意ではなく、転職したときはTOEIC750レベルでした。面接では、実務で英語を使えないと正直に伝えて、それを承知の上で採用してくれるようにお願いしました。ここで見栄を張って英語ができると嘘をついてもよかったのですが、後で考えると、この時に正直に言っておいて良かったと思いました。実際には入社後に、「英語が話せる」ということと「英語で仕事ができる」ということの、レベルの違いを痛感しました。入社後、システムや人事通知などすべてが英語だったので驚きました。でもMSはさすがに色々な翻訳ツールがあって助けてくれました。国際会議での発言なども、周りの英語の上手な人たちの優しくて献身的なサポートのおかげで何とか仕事をこなせました。この意味でも、最初から英語が苦手だと正直に言っておいたからこそサポートを受けられたのだと思います。

 

*注)私は自分の語学力の低さで周りに迷惑をかけていることを痛切に感じていました。もっと重要な仕事をするには英語で直接コミュニケーションが必要だと思って、入社から6年間毎日英語の勉強をしました。退職した今でも勉強を続けています。この件については、こちらで報告していますので、ご参考までに

英語を学び続ける理由 LIFESHIFT処世術 – ゴキゲンLifeShift (gokigenlifeshift.com)

 

私がここで学んだことは、「英語が得意ではなくても、異なる言語を話す人たちとコミュニケーションするのは楽しい」ということです。

外資系企業には、英語が母国語の人もいますが、そうでない人もたくさんいます。国際会議で完璧な英語を求めて、結局何も言わない日本人の代わりに、不完全な英語でも積極的にコミュニケーションする他の国の人たちが多いのが現実です。その姿は英語に対するコンプレックスを持つ人に勇気を与えます。そこでは様々な種類の英語が使われており、この多様な世界では、より理解しやすい英語が必要だと感じました。ネイティブスピーカーになる必要はなくても、英語でのコミュニケーターになればいいのです。

外資系企業への転職において、英語スキルは「必須」だと思わなくてもいいです。ただやる気と努力は必要だと思います。外資系企業で働くなら、今はできなくても、語学を続けて学ぶやる気を持ちましょう。これから語学の勉強を始めても遅くはありません。年齢は学ぶことに関係ありません。

そして異なる言語を話す人たちとのコミュニケーションは思っているよりも面白いです。それは実際にやってみるしかありません。英語が母国語でない人たちのほうが圧倒的に多いのです。完璧な英語よりも分かりやすい英語で、気軽に協力しましょう。

 

エキスパート採用 外資系企業が欲しい「スペシャリスト」になる

 

英語が問題ないなら、外資系企業転職において、何が重要なのでしょうか?実は、言語能力よりももっと大切なことがあります。それは「自分の分野での専門家」であることです。特にGAFAMなどの新興企業では、経験豊富なスキルや人脈が不足しています。そこで、JOB型採用の中でもその道の専門家・スペシャリストを求める「エキスパート採用」というカテゴリーが増えています。あなたにとって英語を必須とする管理職や経営陣への採用が難しいとしても、この「エキスパート採用」なら「年収アップの転職」を実現できます。

ジョブ型雇用では、職種がグローバルで募集されていますが、どの国でもこのエキスパートに関して、完璧な人材を見つけるのは困難です。グローバル企業においては、各支社は採用人材を世界基準に合わせなければならない事情があり、各国においてジョブ・ディスクリプションを完璧にクリアできる人材を探すのは大変なのです。これらの事情から、あなたが特殊分野の特殊スキルにマッチすれば、高い年収で採用される可能性が高まります。

ですから、エキスパート採用においては、年齢はあまり問題になりません。それよりもスキルや能力が優先されます。逆に言えば一定の年齢がないと条件に合わないエキスパート枠もあります。実際に見ても「5+ years of technology-related sales or account management experience. And 3+ years of solution or services sales experience」という意味では少なくとも実務経験が8年以上必要な条件です。このような経験年数を要求するジョブ・ディスクリプションのほうが、年収が良い募集が多いので、年齢がプラスに働く場合があるのです。

 

外資系企業に求められるエキスパートになる方法

次に「セルフプロデュース、キャリアマネジメント」についてお話しますが、日本人は転職市場での自分のキャリアの見せ方が不得意なので、相手の期待に応えるようなキャリアの演出ができていないケースが多いと感じます。私もそうでした。外資系企業に転職するのが初めてで、どう振る舞えばいいかわからない上に、自分を売り込むためのセルフプロデュースができずに、転職市場で自分の価値を正しく伝えられませんでした。今考えれば、転職市場で注目されるための「セルフプロデュース」を知らなかったのです。

 

あなたが、転職市場で効果的なセルフプロデュースができているかどうかを判断するのは簡単です。その基準をお教えします。

 

「毎年1回以上ヘッドハンターから、今の年収以上の好条件のオファーを受けるか?」

この質問にYESと答えられる人は、セルフプロデュースが上手な人で、この文章を読む必要はありません。

NOと答えた人は、どうすれば自分を魅力的に見せることができるかを一緒に考えていきましょう。

 

ジョブ型雇用における「個人の正義」と「社会の人材流動性」

 

ジョブ型雇用の世界で働く人たちは、自分のスキルに自信を持ち、会社にはあまり忠誠心を持ちません。だから、ヘッドハントされたり、自分から転職したりすることに抵抗がありません。この世界では、スキルが収入に直結するので、自分の価値を高めるためには、より高い報酬を得られる場所に移ることが「正しい」判断だと考えます。

企業側も、その人が転職してしまったら、その人の能力や貢献度を正しく評価できなかったと反省するでしょう。転職者の「正義」に対抗できなかった企業の「責任」の問題なのです。

このように個人の正義が優先されると、会社を辞める人は増えていきます。高い離職率はジョブ型雇用社会の「人材流動性」の特徴です。もちろん、企業は離職者に代わる新しい人材を毎年採用しています。

 

日本の生涯雇用制度ではこの常識は通用しません。

 

私の経験から言えば、マイクロソフトは「ブーメラン再就職」を歓迎していました。ブーメラン再就職とは、マイクロソフト→他社→マイクロソフトというように、一度辞めた会社に戻ってくることです。日本の企業ではこのようなケースは珍しく、もし戻ってきたとしても、出世や待遇面で不利になることが多いでしょう。同僚からも「恥ずかしくないのか」と思われるかもしれません。

しかし、マイクロソフトでは、「ブーメラン再就職」は大歓迎です。

この場合、勤続年数は前回の終了時点から再カウントされます。6年勤めて辞めて、3年後に戻ると、スタートは7年目として扱われるのです。これが外部で得た経験や知識を評価する表れだと思います。そして、ほとんどの場合、前回よりも高いレベルで復帰することができます。

 

これが可能なのは、ジョブディスクリプション制度が明確であるため、その基準に合致すれば、すぐに上位のポジションに採用されるからです。実は、社内で昇進するよりも、他社で高いレベルの仕事を経験した方が収入アップの早道だという噂もあります。ブーメラン再就職を前提にして出世レースを加速させるのです。つまり、一つの企業でしか経験できないマネジメントよりも、多様なマネジメントを学んだ人材の価値を高く評価するということですね。

このようにして、人々は自分の実力を転職市場でアピールし、1.2倍程度の収入アップを目指して転職を繰り返すことで、どんどん年収を上げていくのがジョブ型雇用の世界の「正義の競争」です。

 

ジョブ型雇用とヘッドハンターの関係

ジョブ型雇用とは、職務内容や能力に応じて報酬やキャリアが決まる雇用形態です。このジョブ型雇用において、転職者を高額な手数料で紹介するのがヘッドハンターの役割です。つまり、ヘッドハンターは転職者を商品として扱っているのです。彼らにとっては、2年ごとに1.2倍の給与アップを目指す人材こそ「売れ筋商品」なのです。

日本企業にいると、ヘッドハンターと仲良くなれば、スカウトされると思っている人がいます。「ああ、自分もいつかヘッドハンターから声をかけられたいなあ・・・」と、夢見る人みたいな、言い方をする人が多いですが、それは、全く違います。これは、単に人間関係の話ではありません。

外資系企業に行くには、ジョブ型雇用というルールに従わなければならないのです。そのジョブ型雇用ルールの一環がヘッドハンターなのです。そのルールに従えば、ヘッドハンターは次々に転職先を紹介してくれます。なぜなら、あなたが望んでも望まなくても、転職手数料を稼ぐために、です。では、ジョブ型雇用のレールに乗るために必要なことはなんでしょうか?

 

ジョブ型雇用に応募するためのポイント

①外資系企業が利用する求人サイトに自分のプロフィールを登録する
②自分の専門分野やスキルをわかりやすくアピールする
③自分に合った企業が見つけやすいようにプロフィールを工夫する

これらの3点は、初級編のセルフプロデュースの基本です。簡単そうに見えて、実はできていない人が多いです。では、具体的なコツを少しずつご紹介しましょう。

 

外資系の使用する就職斡旋ツール「Linked-in」にエントリーする

 

「Linked-in」は外資系企業向けの就職斡旋ツールとして、今や唯一の選択肢です。日本系の転職サイトにエントリーしても、外資系企業はそこに広告費を使っていません。つまり、彼らが利用しているサイトに登録しないと、競争に参加できないのです。

ハローワークで年収1000万円以上の職種を検索しても、何もヒットしないのと同じです。そのような職種をそこに公開する企業は存在しないのです。ほとんどの求人は時給1000円程度の仕事です。現実を直視しましょう。

特に45歳以上で外資系企業への高待遇の転職を目指すなら、日本系の就職サイトはおそらく無駄です。外資系企業が依頼するヘッドハンターも現在、Linked-inで候補者を探しています。だから、これは必須です。

実際には、外資系企業それぞれによって、その企業が得意なヘッドハンターがいます。例えば、「うちがA社やM社の専属ハンターだから・・・」と自慢する人たちがいるのです。彼らに会うと「〇〇社から優先的に案件を紹介されているから・・・」と言います。

昔は、このようなヘッドハンターと知り合って、その会社の紹介システムに登録してもらうことが重要でした。しかし、ヘッドハンターにも得手不得手がありますし、採用する企業にも波があります。誰がどう動いているかは、こちらからは分かりません。だから、今はLinked-inに登録して、個別のヘッドハンターに頼らずに、広く応募先を探すことが大切です。そして、そこで自分のアピールポイントを磨き続けることが、有利な転職につながるということです。

 

Linked-in以外のツールの活用

Linked-inのユーザーになったらSNSでの発信は必須だと思います。ただし、各々のSNSによって自分のイメージが異なる人、言っていることが矛盾したり、不鮮明になる人は注意が必要です。あなたのSNSはすべて見られているということを忘れないでください。

外資系企業が人を採用するときは、必ずLinked-inやFacebook、Twitter、InstagramなどのSNSでプロフィールを確認します。もちろん、プライベートなアカウントで何をするかは自由ですが、SNSによって言っていることが一貫していない人は信頼できません。SNSでの発信は一貫性を持つように心がけてください。これは今の時代の基本的なスクリーニングです。

デジタルタトゥーは、若者だけの問題ではないのです。特に転職活動ではFacebookでの発信が目につきます。Linked-inと矛盾しないように、自分の実績をしっかりアピールしましょう。

できればLinked-inなどでは、英語での発信をすると良いでしょう。ただし、英語力が低いとすぐにわかってしまうので、無理はしないでください。Linked-inへの登録は英語が多いため、最初のハードルと言えます。そして、そこにどんな内容を登録するかが、効果的な自己アピールの次のハードルと言えます。

 

採用企業が「探している分野、探している職種」でアピールする

 

これは、私が転職した後に身につけた知識ですが、外資系企業の中には、職種や業種の分類、役職の呼び方に共通のルールがあるところがあります。特にIT系企業にはIT業界のルールがあり、製薬会社には製薬会社の業界ルールがあります。それを最初に理解しておくといいでしょう。正直言って、日本の採用分類とは違って、戸惑うことも多いですが、慣れるしかありません。

マイクロソフト社の求人ページの職種分類を参考にしてください。

職種一覧 (microsoft.com)

あなたは専門業種において自分の強みをアピールしたいと思っているかもしれませんが、相手の業種分類を無視して自分の言い分だけを押し付けるのは逆効果です。まずは相手の業種分類を理解しましょう。この専門業種の表現は、企業によって共通点もあれば違いもあります。相手の業種名を正確に把握することが重要です。おそらく、自分の専門分野の英語名とは、何らかの関連性があるでしょう。論理的にアプローチしてください。

自分の専門の教育分野でも”Public sector – Sales- Education” という大きな枠組みの中でも”K-12”と”High -EDU”では、対象となる学校が異なります。必要とされるスキルも大きく異なります。

そして、最も重要なことは、「採用企業側が現在、どんな分野に注力しているか、どんな職種に需要があるか、どんな人材を探しているか」をしっかり調べることです。特に自分が経験してきた業種がその外資系企業にとって今後重視したいエリアかどうかを見極めるべきです。

Public Sectorに強みを持つ企業もあれば、これから公共事業に参入しようとする新進気鋭の企業もあります。例えば、Educationが、今後EDU-TECHとして、年収向上のためのビッグデータ活用の基盤データになるという社会の動向に対応しようとしている場合や、Back Office中心の会社が初めてFront Endにビジネス展開する場合など、そういったチャンスを捉えて、自分が「採用企業側が求めている分野、求めている職種」に適合することをアピールできると良いでしょう。

 

要約すると、収入を高める最もシンプルな方法は、市場で最もニーズがある場所に位置することです。

つまり、人気のある分野で、人気のある業種、人気のある職種、人気のあるスキルを持てば、どんな人でも良い条件で転職できるのです。逆に言えば、この条件のどれかが欠けているから、あなたの転職は困難になるのです。

さらに、安定していた20世紀なら、この「人気」が30~40年続いたかもしれません。しかし、現在は不安定な21世紀、「人気」の期間は極めて短く、高い給料を払える職種はかなり限られています。そして転職市場では、常に人気の職種には競争が激しい。

 

あなたのキャリアやスキルを「より稼げる人気業界にどうやって合わせる」には、短期的な戦術と長期的な戦略に、対策を分けることができます。

 

まずは、短期的な戦術をご説明します。調査して、分析して、「採用企業側が望んでいる分野、望んでいる職種、望んでいる人物」が明確になったとして、Linked-inなどで公開する自分のキャリアやスキルが、それに合致しない場合はどうするのか?という話になります。

 

ハンターから狙われやすいように演出する

 

経験は力です。逆に言えば、あなたの経験と人柄以外に売り込むものは多くはないのです。ただその「経験の見せ方」にはコツがあるのです。求人者にとって、重要なのは「求められた転職条件にいかにマッチする人材」であるかどうかです。実際、ハンターたちは、「JOB Discript」に記入された条件にあう人物の匂いを探して、Linked-inの中を嗅ぎまわっていきます。業種界隈の情報をサーチして、イベントをのぞき込み、グループを探り、個人名に行き当たれば、その人の経歴と発言を追跡するのです。

ここに絞って対策をすることは可能です。

 

①自分が売り込めるはずの「分野、業種、職種、スキル」を分析しましょう。
②目標の企業が必要とするはずの「分野、業種、職種、スキル」を分析しましょう。
③ここにミスマッチがあるとして、それを冷静にリストアップしましょう
④そのリストをどれだけ言い換えできるのかを考えてみましょう。

言い換えはある程度、加工可能なはずです。ITに強いというスキルは、いまなら、「データ分析」、「AI解析」、「自動化経験」などに変更できます。教育事業なら、デバイス担当の時代はすでに終焉しました。いまなら「教育データ活用」、「リカレント教育」などのキーワードを交えることで、今後10年、業界で通用する経歴にすることは可能です。

このようにして、自分の経歴やスキルを最新かつ最適化されたものに見せることで、ハンターから注目されやすくなります。また、自分から積極的にアピールする際も、相手企業が求めているものに応えられるように伝えることが重要です。プロフェッショナルな転職者として、自分の価値を高めるためには、このような戦術が必要です。

 

ブループリント=「人材採用枠」を意識する

 

あなたが外資系企業に転職するのは初めてだとしたら、知っておいてほしいことがあります。

外資系企業には、年間の「人材採用枠」と呼ばれる「ブループリント」が存在します。この枠の範囲内で、各分野のヒューマンマネージャーは、現在の社員を維持しつつ、必要な人材を採用していきます。

そして、ここがポイントなのですが、「人気のある分野、人気のある業種、人気のある職種、人気のあるスキル」は、このブループリントが大きく拡大されています。あなたが「求められる場所に自分を置く」ようにすれば、採用されるチャンスはぐんと上がるのです。

反対に、あなたが、今の「分野、業種、職種、スキル」に固執すればするほど、その採用枠の可能性は狭まっていくのです。どこまで自分を開放できるかを考えてください。

ただし、とても、とても重要なことは、その状況でも自分の「特別なもの」が残っているかを、見極めることです。多くの読者は、この段階で、自分の「特別なもの」はほとんどないと落ち込んでいるかもしれません。心配しないでください。時間は誰にでも平等です。今の持ち物は少ない。それだけのことですよ。武器は自分で作るのです。

 

短期間でそれができないなら、長期間にわたって、自分の武器を増やすのです。

 

最重要はリスキリング 「学び直しによる セルフマネジメント」という話

 

教育論の専門家として申し上げますと、自分のキャリアをどのように築き、どこで経験を重ね、どこへ向かって能力を高めていくかを、もっと能動的にプランニングしなければならない時代になったということです。

VUCAの世界では、誰も未来の状況を予測できません。私たちは、常に変化する事態に適応し続ける必要があります。だからこそ、「リカレント教育(卒業後も生涯学習を続けること)」や「リスキリング」が重要視されているのです。

この章でお伝えしている転職市場でのセルフプロデュースとは、究極的には「リカレント教育を通じて、自分のスキルや能力を再学習し、自己管理すること」という話になります。不安定な21世紀において人気の職種を獲得するためには、自分自身で「自分の履歴書とスキル」をデザインし、常に最新の状態に保つ、絶え間ない努力が必要です。これができる人だけが、「高収入の職業を転々とできる」のです。

残念ながら学歴で学習が終わると思っていた「幻想の時代」は終わりました。私たちは学び続け、死ぬまで更新し続けるしかないのです。

そして、時代の流れを読み取り、どこで何を学べば、より良い人生を送れるかを自分で主導的に考えて、実行する力が強く求められています。今回は転職という切り口からこの話をしましたが、教育という観点からも同じことが言えます。社会制度の再構築や人口減少対策というテーマでも、同じ議論をする必要があるでしょう。ですから単なる短期的な対策ではなく、長期的な人生設計として、「より稼げる業界に合わせる長期的なセルフデザイン」が重要なのです。

 

自分の弱みを徹底的に分析して「スキルマップ」にする

 

では、長期的な対策について詳しくお話しします。まずは、短期的な対策として挙げた③に着目してください。

③自分が売り込めるはずの「分野、業種、職種、スキル」を分析し、目標の企業が必要とする「分野、業種、職種、スキル」を分析し、その差を冷静にリストアップしましょう。現状と目標のギャップを客観的に整理するのです。それが「スキルマップ」と呼ばれているものです。

自分が志望する職種が必要とするスキルと、今の自分が持っているスキルのギャップを把握することが、あなたの作るべき「スキルマップ」活動の基礎になります。ただし、スキルマップを用いたリスキリング活動では、「今はできないけど、時間をかければ、このギャップは埋められる」という「決意」が必要です。ここで大切なのは、必要なスキルはいずれ必ず身につけるという「信念」を持つことです。

不足しているスキル・キャリアを身につける

 

私は、自分のキャリアに必要なスキルを継続的に学ぶために、今後3年間で学ぶための「リスキリング計画」を作成しています。

まず、自分が未熟なことや改善したいこと、他人からフィードバックを受けたことや興味のある技術、注目されているトレンドなどをリストアップして、それらを「習得レベル」で分類します。「習得済み」と「未習得」に分けます。別の観点で「強みとなっているか、まだ弱みなのか」を判断します。これで自分のスキルの現状が把握できます。「習得済み」でも、「強み・個性かどうか」で再度見直し、強みや個性がなければ、それを復習する計画を立てます。もちろん「未習得」のものは、「必要性」で優先度を決めて、半年ごとの目標に設定します。

この手順をくり返すことで、6つのフェーズ(半年ごと3年間)から構成される「スキル・経験のリスキリング計画表」が完成します。

学ぶべき内容は、さまざまです。私自身の経験では直近の過去3年間では、IT関連のデータスキルやAIスキルだけでなく、感情コントロール、異文化理解、起業の知識、落ち着いた態度、困難に対するレジリエンスなども幅広く習得する必要がありました。それらは全て「今すぐに取得するのは難しいけれど、中長期の努力を継続すれば最終的には学べるスキル」だと思っています。

習得する方法としては、オンラインのコースで2時間程度で十分なものもあれば、長期的な取り組みによって習慣や人格として習得すべきものも存在します。とは言え、努力しても学べないものは存在しません。すべてのスキルは習得可能なのです。目標を達成するために努力することを怠らなければ、いずれはそのスキルを習得できると信じています。

 

スペシャリストになるコツは、会社のためだけに動かない

では、最後に一つだけお伝えしたい実践的なテクニックがあります。それはこの長期的なスキルマップを実現し、同時に転職市場で自分をアピールする方法です。つまり「高年収のエキスパートになる方法」です。

 

まず「自分はブーメラン転職ができる並行社会の一員だと自覚しましょう」。いまの会社から退職して、業界の他の会社に勤めた後で、今の会社に戻ってくる可能性を織り込んでください。そうした社会で注目されるためには、あなたはどうすればよいのかを冷静に分析しましょう。そうすると気づくことがあります。今所属している企業だけに価値を提供することだけがこの並行社会での正義ではないのです。今の会社に対しても、次の会社に対しての、競合他社に対しても有益な行動があるのです。それに気が付くことがスペシャリストであり、エキスパートです。どうかこの点を、短期、中期、長期の視点で考えてみてください。これを実行できると、その業界でナンバーワンを争う有益な人材になれます。

あなたが外資系企業に所属している場合、そこでは短期的な利益を追求されるので、Win-Loseの勝ち組を目指しがちですが、その企業から並行に転職した場合、その先の企業が負け組のLoseしていては、自分の転職先がなくなってしまいますよね。すべての競争者を蹴落とし、食い殺し、自分以外はぺんぺん草がない状態にしなくても、みんなで一緒に勝つ方法はあるのです。

現在所属している企業のために貢献するのは当然のことですが、それだけにとどまらず、業界全体のWin-Winを目指すべきなのです。売上や利益だけでなく、業界の発展や社会の改善にも貢献できるように、Win-Winの活動に注力しましょう。

具体的には、1社では解決できない問題に対して、業界団体や政府と協力して取り組み、貢献することが大切です。そのような経歴は、スペシャリストとしての実力を最も示すものです。なぜなら、それは並行社会において未来の雇用者の目に留まりやすものだからです。

これが並行社会における「選択肢を最大化する秘訣」です。あなたの敵は、明日のパートナーになるかもしれません。それが並行社会の特徴です。この社会で徹底的に打ち負かすべきか、共に協力して前例のない挑戦をするべきか、選択はあなた次第です。

このブログでは、「リタイアする前の給与をいかに効率的に上げるか」を検討してきました。特に年収を上げることが難しくなる45歳以上の方に向けて、外資系転職について考えてきました。経験者からの最後のアドバイスは、次のまとめになります。

 

あなたがキャリアの後半戦で、年収を上げたければ、業界を代表するスペシャリストやエキスパートを目指し、業界のどの企業からでも引く手あまたになるように、ラーンとアンラーンを繰り返して学び続け、Win-Winを発揮してみてください。

 

信念さえあれば、この行動を続けたとき、あなたは市場価値を高めているはずです。

 

 


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