アーリーリタイアの目標は、「生活費の25年分」でいいのか?
「生活費の25年分」が、F.I.R.E(経済的自立をした上でのアーリーリタイア)のひとつの貯蓄目安とされています。
若い人が貯蓄額の当座の目標設定として、この目標を設けるのは良しとしても、アーリーリタイアが現実味を帯びた段階で、この基準はとても甘いと感じます。本気でアーリーリタイアしたければ、もう少し論理的な武装が必要だと思うのです。
自分の生活水準を見直す
まず、人によって生活レベルに差があるので、この「生活費25年分」という基準はかなり幅を持ちます。
年間250万円で生活できれば6250万円だし、年500万円の生活水準なら1億2500万円となり、その差だけでも6000万円以上の差になるのです。
これでは、ざっくりし過ぎですよね。
ここで重要なことは、「生活費」について、自分でしっかり管理できなければ、アーリーリタイアには、ほど遠いということです。
まず、自分の支出を把握することが、アーリーリタイアの出発点になりますが、実現のための秘訣があるとしたら、日々の支出をケチケチ節約するよりも、「生活水準を上げない」という大きな決意が必要だと考えています。
お金を貯めるノウハウは別記事にまとめていきますが、「年収を上げながら、かつ、生活レベルを上げない」というのはかなり難しいことなのです。
簡単に上がってしまう生活水準への対処
経験のないみなさんが思うより、ずっと簡単に「生活水準」は、自然と上がってしまうものです。
転職することで年収があがる、投資が成功して贅沢に手を出す、などなど収入が増えるとその分、支出は自然と増えていきます。
ランチを友人と食べに行く場合の店のセレクションだって、年収の増加に合わせてレベルアップしていきます。
それは毎食500円以上の差で積み重なっていきます。さらに忙しくなると「時間を買う」という形で、支出が増えていきます。
タクシーの利用、各種の時短サービス、時間を短縮する家電、買い物時間をなくす宅配サービス・・・。
気づいていますか? 「便利」を安易に買えば、生活水準はすぐに上がりますよ。
住む地域によっても、働くエリアによっても、つきあう人間関係によっても、支出のレベルが徐々に上がっていきます。
まるで滑らかなエスカレーターに乗っているようなので、気が付きにくいのですが、生活水準はインフレ率を上回って増え続けます。
自分ご褒美、キレイになる投資、前から習いたかった趣味、子供を通わせる学校、無農薬野菜・・・。
なりたかった自分になるため、周りに合わせる形など、様々な理由をつけては、スッスッと、支出が増えていくことはよくあることなのです。
年収が上がっても、生活水準を上げない
今回の忠告は「年収が上がっても、生活水準を上げない」ということです。
自分を事例にするなら、家電メーカーの部長職で年収800万円だった生活水準をその後15年以上守り抜きました。
52歳で外資系IT企業に転職したので、正直最終年収はその倍を超えましたが、あと何年くらい働けるか不安だったことが強く、周りの外資系の方々に比べれば、6年間つましく、清貧で過ごし、生活水準は一切あげませんでした。
ちなみに年収があがれば、その分、税金比率が高くなり、信じられないくらい取られますので、年収を必死にあげてアーリーリタイアを実現しようと考えている方は、目標をあげすぎないように気をつけましょう。
そんなに簡単に資産は増えないですよ。ちなみに、アンケートでは年収800万円台の方が一番幸福度が高いそうです。
ゴキゲンな贅沢は、すべき
しかしながら、このゴキゲンLIFESHIFTでは、節約だけをテーマにするつもりはなく、逆にある程度の「ゴキゲンな贅沢はすべき」と考えています。
それは上の世代のもったいない人生を見ているからです。
彼らの世代は戦後、死に物狂いで働き、子供の教育費をつぎ込み、自分が通えなかった大学に入れ、あげくに老後の世話は一切してもらえない。
最後に子供に多額の資産を残しても、お互いは不幸になるだけでした。
自分で稼いだ資産はゼロまで使い切って死ぬ
私たちの世代はこの事実を重く見ています。なので、ゴキゲンLIFESHIFTでは「自分で稼いだ資産はゼロまで使い切って死ぬ」を、メインコンセプトにしたいと思っています。
ここではミニマリストのように清貧だけを謳い文句にするつもりはありません。
加えて、今後、このブログで研究していくのは「日本人は生涯では使い切れないくらいに貯蓄し過ぎなのではないか」という仮説です。
不思議な話、貯めることに関しての書籍やWEBはいくらでもあるのに、「資産を使い切る」というノウハウは誰も教えてくれないのです。
そして、世界一の金融資産が手つかずの状態で膨らんで、経済をまったく回していないのが、日本の実態です。
皮肉な話、今日のブログが象徴するように、貯めることを先に書かないと、使い切ることに到達しないのです。
そして、現在の皆さんの関心は、あくまで「貯める」に集中してしまっているのです。
この点をまとめるなら、どの研究も、資産形成(貯める)ー資産活用(使う)ー資産終焉(使い切る)の3段階のうちのステップ2にしか届いていないということです。
なので、この今日のブログを読んでいる人も、ライフステージによって、まるで違う感想を持つと思います。
ステップ1の貯める段階の人は、「贅沢など敵だ」と思い、1円でも目標に近づくために貯蓄したいと思うでしょう。
それが、ある程度貯蓄ができて、アーリーリタイアを目指し始めたステップ2の人は、「アーリーリタイアを実現すれば、贅沢するのになぁ」と妄想しているかもしれません。
悲しい話、STEP3のアーリーリタイアを実現した人間でも、「使い切って死ぬ」という研究が進んでいないため、「怖くて贅沢できない」というのがリアルなのです。
アーリーリタイアを実現したければ、生活水準はあげない、そして、経済的自立を継続したければ生活水準はあげてはならない。ゆえに資産を贅沢に使うことは「悪」なのです。
ゴキゲンに「資産を使い切る」というノウハウが確立していない
このように、資産を使い切って死ぬための方法は確立できていないっていうのが、アーリーリタイアをめぐるリアルだと思います。
そしてこれも大事なポイントですが、ひと昔の「バブル貴族(笑)」のように、高級外車を買ったり、タワーマンションを転売目的で購入したり、気軽にタクシーに乗ったり、無農薬野菜にこだわったり、バブルな食事をしたり、高級旅館に行ったりするのは、どうしても気が進みません。
参考記事
FIRE理論を逆転するDie with Zero:【資産は使い切って死ぬ】理論で後悔しない人生設計
地道で、ていないな暮らし
時代の気分は、こうした浮かれた雰囲気から遠く離れていると考えています。FIREブームである年下の世代も同じ感覚を共有していると信じていますが、「地道で、ていないな暮らし」という方向で、経済的自立を目指している気がしてならないのです。
だから、もっと地道に、もっとインテリジェントに、もっと真摯に人生を送るにはどうしたらいいかを、まじめに考えて、今回の「ゴキゲンLIFESHIFT」に着手し、58歳でアーリーリタイアへの冒険しました。
実際には、これから自分自身が経験することを通して、アーリーリタイアの実態をここで報告しながら、仮説検証していくことになると思います。よろしくお願いいたします。
この記事については、まとめ記事にバージョンアップしていますので、お時間あればこちらをお読みください。
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