7つの習慣の究極の目標 「シナジー(創造的協力)」
このブログではフランクリン・R・コヴィー博士の名著「7つの習慣」を、自分なりに読み解く企画を進めています。この記事で、「7つの習慣」も残り2つの章になりました。
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名著「7 つの 習慣 スティーブン コヴィー」でゴキゲン×ヤリガイのある人生を手に入れる 総集編 – ゴキゲンLifeShift (gokigenlifeshift.com)
前回、ご紹介したように第4の習慣と第5の習慣の二つの習慣の実践の上で得られる果実が、第6の習慣「シナジーを創り出す」であり、この3つが連動して「公的な成功」を成し遂げるとされています。
それどころか、「シナジー」は、全ての人の、あらゆる人生において、最も崇高な活動であり、いままで学んできた「7つの習慣」のすべてを実践しているかどうかの真価を問うもので、その7つの活動の「目的」であるとまで、強調されています。
「シナジーは、原則中心のリーダーシップの神髄である。人間の内面にある最高の力を引き出し、ひとつにまとめ、解き放つ。ここまで学んできたすべての習慣は、シナジーの奇跡を創り出すための準備だったのである」コヴィー
シナジーと第2の習慣(自分のミッションステートメント)の関係
第2の習慣「終わりを思い描くことから始める」の考え方から見ると、この第6の習慣の「終わり(結果)の見えない高み」を求めることに、不安を覚えるかもしれません。
さらに言えば、自分自身のミッションステートメントと、他者のミッションステートメントには、必ず齟齬があり、そこに「衝突」ができると考えるのは素直な不安だと思います。
まそにそれが、譲れない原則同士の「価値観の衝突」だからです。
コヴィー博士は、だからこそ、いままで学んできたすべてを動員して、この「相互協力の高み」を目指してほしい、と励ますのです。
「(いままでの習慣を総動員すれば)内面に意欲がみなぎり、心が安定し、冒険心が満ちて来て、前に考えていたことよりもはるかに良い結果になると信じることができるはずだ。それこそが最初に描くべき「終わり」なのである。
そこに参加している人たち全員の洞察を得られる。そして、お互いの考えを知ることで得られる興奮がさらに洞察力を深め、新しいことを学び成長していけるという確信を持って、コミュニケーションを始めるのである」
Diversity 価値観の衝突から「第3の案」を得る
コヴィー博士は、ここで、Diversity(多様性)の本質に迫ろうとしています。
自分自身のミッションステートメントや原則、価値観と、他者のミッションステートメントや原則、価値観には、必ず齟齬があり、そこに「衝突」が起こります。
それは致し方ないことであり、その衝突は自然の流れなのです。
だからこそ重要なのは、その価値観の差を認め、多元的な観点に立って、多様な価値観の衝突から「第3の案」の発想を得ることなのです。
「他者とのコミュニケーションが相乗効果的に展開すると、頭と心が開放されて新しい可能性や選択肢を受け入れ、自分の方からも新しい自由な発想が出てくるようになる」
この心境を利用して、自分だけでも思いつかない、相手だけでも思いつかないレベルの「第3の案」にたどり着くのです。
博士は、多様性の衝突を利用することで、「高みの発想」を得るべきだと言っているのです。Diversity(多様性)の本質理解はここにあると思います。
単に、多様な人を社会的に許容するだけではなく、その異質な人を愛したうえで、そこで生まれる異質な衝突を恐れずに、お互いに胸襟を開いてぶつかり合って、お互いを励まし合いながら、かつてない前代未聞の「第3の案」にたどり着く。
そのためのDiversity(多様性)なのです。
もとめるべきは、「あなたをイライラさせる人」
「多様性の衝突を利用する」というコンセプトに基づけば、シナジーの効果が最も高められるのは、「あなたとは180度違う価値観を持った存在」ということになります。
つまり、意見が合わない、気も合わない、あなたをイライラさせる人です。
差異が大きければ大きいほど、その衝突のエネルギーも大きく、たどり着くはずの地点も高くなる、というのがシナジーの方程式なのです。
逆に言えば、「同質な相手とは、シナジーの効果を得にくい」ということが導き出せます。
心理的な安全性を重視して、周りにいる人々に居心地の良さだけを求めると、そのグループは結果として、大きな革新は生み出せないということになります。
これは、歴史が証明していますね。安定したムラ社会が崩壊するときは、外部の、異次元の「野蛮さ」を持った新しい集団に襲われるときです。
概ね、その新集団は、既存のムラ社会で疎んじられて、仲間扱いされなかった「別の価値観」を持った集団であることが多いですよね。
「異質な存在との出逢いを求めよ」と説くコヴィー博士の助言に従うならば、あなたが人生で求めるべきは「当初、あなたをイライラさせる人」なのです。
このイライラの正体である「心理的安全性」は、お互いの努力で埋めることができます。
お互いが歩み寄り、心を開いて考えだす、その人と自分との違いはなにか、に目を向け、違っていても問題ないと、互いが尊重し合えば、心理的な安全圏はスッと広がります。
そして、考えだすのです。「どうやったら第3の案を見つけられるか?」 その時、同質の間柄では、予想もつかない、革新的な「第3の案」が見えてくるのです。
「シナジーの本質は、お互いの違いを認め、尊重し、自分の強みを伸ばし、弱いところを補うことである。男と女、夫と妻の肉体的な違いは誰でも認めるところである。しかし、社会的、精神的、情緒的な違いはどうだろうか。これらの違いもまた、充実した人生を生きるため、お互いのためになる豊かな環境を生み出す源となるのではないだろうか。これらの違いこそが、お互いの自尊心を育み、価値を生かし、一人ひとりが成熟して自立し、やがて相互依存の関係を築く機会を与えてくれる環境をつくるのである」
このコンセプトを延長すると、第6の習慣が求める最大のステージが見えてきます。
それは、「敵対する相手と円卓を囲んで第3の案を創る」という場面です。
戦争状態の2か国の停戦交渉の場面を思い浮かべてもらえればわかりやすいですね。こういう場面でも、7つの習慣に基づけば、我々には、知性的な「第3の案」にたどり着くことができると主張しているのです。
信頼と協力の相関図
こうした「対話」を実現するための心理的安全性は、「信頼と協力の相関図」として図にすることができます。その意味は、信頼関係の作り方がコミュニケーションの質に影響を与える、ということです。
この関係にはレベルが3つ存在すると「7つの習慣」で説明されています。
Level.1 防衛的な関係
相手を信頼せず、それ故にお互いに協力をしないとすれば、その関係は、自分の立場を守ることしか考えず、揚げ足をとられないように用心深く言葉を選び、問題が起きないように予防線を張り、逃げ道をつくることを前提にコミュニケーションをとろうとします。
ここで得られる結果は、第4の習慣で言うところの「Win-Lose」または「Lose-Win」しかなく、まさに勝つか負けるかというものです。
Level.2 妥協的な関係
中間に存在するのは、「お互いを傷つけないように尊重するコミュニケーション」です。これは、それなりに成熟した人間関係であり、同質化したムラ社会でよく見かけます。
相手に敬意を払い、面と向かって反対意見を言わず、対立を避けてばかり。衝突がないので、一見、問題がなさそうに見えます。
事実、ひとりひとりが決まったことを「自立的」にするよな段階ならば、うまくいっているように見えるのです。しかし社会全体見れば、実はなにも「新しいことは起こっていない」のです。
相互依存の低いレベルで、お互いを尊重するコミュニケーションが発達すると、たいていはありきたりの「妥協点」を見つけて、終わりになります。
前例主義、安全主義がはびこっていく環境です。この場合、建設的な「No Deal」という終わり方すら思いつかないはずです。
平和な関係と言えば、この関係は落ち着いています。しかし、それが「危険」だともいえます。
この妥協点は、見ようによっては、「相手を攻撃することもなく、相手を操作しようとする魂胆もない、正直で誠意ある「Win-win」な解決策に見えなくもない」とコヴィー博士も指摘しています。
このレベルでは、「個々のクリエイティビティなエネルギーは解き放たれず、本当のシナジーにたどり着けない」のです。第6の習慣の教えは、こうした相互依存の低いレベルに留まることの危険性を指摘しています。
Level.3 シナジー的な関係
第6の習慣で求められているのは、「個々のクリエイティビティなエネルギーが解き放たれ、1足す1が、100や1000になるシナジー」なのです。
これには、強い信頼関係と、本質にたどり着くまであきらめないという本気のコミュニケーションが求められています。「7つの習慣」で学んできたことがこの関係をつくることに貢献してきます。
・まず高い信頼口座の残高が必要です。
・そして自分自身が「自立」する。
・自立した同士がコミュニケーションの関係をつくり、そこで「他者を思いやる」。
・そのうえでWin-Winを考える姿勢、まず相手を理解しようとする努力から始める。
そのような前提のもとで、「あなたが私と違ってくれてありがとう」と多様性を認め合い、それを利用しあって、従来では考えもつかなかった高みに登るのです。
これを「創発」と呼びます。この「創発」という言葉も、「7つの習慣」が世間に流布したコンセプトです。最初に示された「妥協的な案」をはるかに上回ったプランが多数繰り出され、全員が心から創造的なプロセスを本心から楽しみ、その多様な選択肢から、納得で一つを選ぶ。
この成果をコヴィー博士はこう言います。
「そこにはちいさいながらも完結した文化が花開く・その場限りで終わってしまうかもしれないが、P/PCバランスが取れた完璧な文化なのである」
「1+1 > 2」 創造的協力をすれば全体は、各部分の総和よりも大きくなる
「全体の合計は個々の部分の総和よりも大きくなる」小学校で習った算数の解とは違うので、信じない方もいるかもしれないですが、この理屈は簡単です。
「個々の部分の総和だけでなく、各部分と各部分の各々の「関係」が、因数として加わり、それ関係自体がそれぞれに「部分」として存在するからです」
コビィー博士は加えて、この「関係部分」は、シナジーのための「触媒」として、重要な役割を果たすという、貴重な指摘をしています。
異質な人との間の「接点」を探し、それを触媒にして、新たな創発を得るというのが、具体的なシナジーを得る方法なのです。
異質間の「接点」にこそ、貴重な創発が隠れているのです。
創発 創造的協力への道
完訳版で、ショーン・コヴィーは、シナジーに到達する道筋を明らかにしています。
「シナジーは、自然に生まれるものではない。意識しなければ到達できない。
次の5つのステップに従ってみてほしい。やってみればとても簡単だ。
1.問題あるいは機会を明確にする
2.まず 相手の考えを理解することに徹する
3.自分の考えを伝え、理解してもらう
4.新しい選択肢やアイデアを一緒にブレストする
5.最善の解決策を見つけ、合意する 」
私は、人生を「プロデューサー」という職務で全うしました。プロデュースの本質こそ、この5つのステップをベースにした「対話」と、その結果で得られた「創発」でした。
私は、ホワイトボードが大好きで、プロジェクトメンバーとは、いつも板上に意見を見える化しながら、激論を交わしてきました。
その好きが高じて、「電子的なホワイトボード」のつもりで、「電子黒板」の開発にいそしみ、その発展形として、子どもたちに「対話を促すプラットフォーム」として、パソコンを配り、それをTeamsというプラットフォームで有機的に結び付け、そこで離れている友達とも「創発」を可能にしました。
人生を、「創発と対話」のために尽くしてきた、といっても過言ではないと思います。
これらは、若いときに「7つの習慣」を読み、その人生の早い時期に幸運にも、いくつかの忘れがたい「創発の体験」をしたことで、第6の習慣という「仮説」が自分自身として証明され、自分の体験として腑に落ちて、その実体験を糧にして、進んできた結果でした。
開拓者の勇気を持って、シナジーの冒険に出よう! いざ、創発へ!
コビィー博士は、こうしたシナジーを探す行為を「冒険」に例えます。
シナジーの「創発」を経験していない人も多いと思います。特に同質な人が多い日本に居ればなおさら。同じ学校や、同じ職場の人間とだけ交流していれば、ムラ社会の常識が、個人の発想を縛り続けます。
いま、会社を辞めて、フリーの立場になると、いままでがいかに同質性に守られていたかよくわかります。
いま、私の周りには、働いている人も、働いていない人も、小学生も、高校生も、大学生も、老人も、障碍者も、個人事業主も、スタートアップも、大手のグローバル企業も、男性も女性も、日本人も、外国人も、そこにいる人も、画面の向こうの人もいます。これこそが、多様な層だと思います。
外資系の企業にいたので、ある程度、ダイバーシティという概念に親近感はあるのですが、それでも、そのコミュニティでは、「マイクロソフト」という同質性に囲われたものでした。そこから出て初めて、本当の異質性・多様性の価値に気付きました。
だから、私もこれからも新たなシナジーの旅を続けます。さぁ、あなたも勇気を出して、飛び込んでみませんか!