世界をHACKしろ! 普通の奴らの上を行け
図書館で頼んでいた橘玲氏の「裏道を行け ディストピア世界をHACKする」が3か月待ちでやっと届きました。
前作「上級国民/下級国民」、「無理ゲー社会」を一歩進めた社会評論で、本作のテーマは、「人生が攻略不可能だと感じたら、若いゲーム世代がシステムをハックしようとするのは不思議でもなんでもない」です。
大きくまとめると、「過激にリベラル化し、高度化した知識社会のなかでは、普通の奴らの上を行くルール・ブレーキング=「HACK」が”大衆化”している」ことを指摘しています。
HACKは、ブラックハッカーであれ、ホワイトハッカーであれ、常識を打ち破るルールブレーカーであり、彼らのイノベーションはカッコいいというものですね。
身近なところでは、Life Hackerとか読みますね。あれも日常のルールをまともにやらないで、少しでも近道を見つけて、裏道を行くマニュアルだということです。
「HACK」=ルール・ブレーキングする人、脱落する人
ルール・ブレーキング=「HACK」の事例として、「モテ格差解消」のために女性の脳をHACKするナンパ師、金融市場をゲーム攻略するヘッジファンドメーカー、消費者の脳の報酬系をHACKする企業の実態、自分の脳や身体をエンハンス(増強)させるバイオハッカーなどが各章で紹介されます。
この中で印象的だったのは、「上級国民/下級国民」でも語られた非正規・非モテの構造。
持たざる女性が「エロス資産」を用いて高収入の男性に押し掛けるため、モテ群の男性は生涯に離婚を繰り返し、実質1夫多妻の状態。そこで増えているのはシングルマザーと非正規を中心とする非モテ群だ、とするのが、橘氏の理論です。
このところ非モテ群による「絶望死(巻き込み型自殺)」が横行していて、この現象はさらに現実味を増しています。特に京王線のジョーカー事件は自分が通勤で使う電車内のことであり、「巻き込まれたら逃げられない」という点で衝撃でした。
経済的に自立(F.I.)した人間のミニマリズム運動
さて、ゴキゲンLIFESHIFTとして、この本で注目すべきは、最近橘氏がいろいろなメディアで発信している「FIRE信奉の核心はBOBOSであるとする」言説です。私は、これについて、前回の記事で「多少、違和感を感じざる得ない」ことを言及しています。
FIRE指南書「アメリカ新上流階級 ボボス」を読む BOBOに感じる違和感 – ゴキゲンLifeShift (gokigenlifeshift.com)
本書の最終章「世界をHACKせよーどうしたら「残酷な現実」を生き抜けるか」で、橘氏はこの論を少しひも解いて見せてくれました。
最近の「ミニマリズム」と「FIRE」という2つの運動の帰結は、「フリーエージェント化したBOBOS」になる。
「経済的に自立した人間のミニマリズム」が、この時代の空気感だと指摘してます。
要約してみます。
・まず、若者たちは「頑張って働けば報われる」という親世代の夢が持てなくなっている。
そのため「人生は攻略不可能な理不尽な無理ゲー」という感覚を共有している。
・この状況の対抗理論として、「ミニマリズム」と「FIRE」が生まれた。
・かつての幸福の象徴であった「モノ」を必要としない生活を提案するミニマリズム。
・いっぽう、お金がなければ自由もないとして、倹約によってできるだけ多くの貯蓄をするFIRE。
・この2つの運動は一見対極的でありながら、実はともに「お金にとらわれない生活」を目指している。
・つまり若者たちは、倹約と資産運用によって「自由な人生」を手に入れようとしているのだ
・FIRE理論を前半部と後半部に区別すべきで、「F.I.=経済的な自立」の次にある「RE(早期退職)」の意味は
「悠々自適で遊び暮らす」ことではない。
・それは「経済的に独立して、好きな仕事・社会活動を通して、大きな評判を手に入れる」という運動に変わっていくはずだ。
・ブルジョアとボヘミアンを組み合わせたBOBOSはゼロ年代以降に登場した新富裕層のことだが、
彼らの生活スタイルこそ、「経済的に独立して成功したミニマリスト」である。
・かつてBOBOSになれるクリエイティブ・クラスは、一流企業に所属するエグゼクティブや、コンサルタント、エンジニアなどだったが、WEBとSNSが急激に普及した社会では、急速にフリーエージェント化している。
・個人の評判経済が確立したために、会社に帰属しなくてもWEBで、プロジェクト単位での仕事を受発注できるようになってきている。
・こうした個人フリーエージェントは、自分の裁量で、嫌なやつの仕事を断り、好きな人とだけで働けるので、いままでの人間関係のストレスからおさらばできる。
・以上の状況から 最近の「ミニマリズム」と「FIRE」という2つの運動の帰結は、「フリーエージェント化したBOBOS」に行き着くと結論する。
BOBOSに感じた違和感の解消
FIRE理論を前半部と後半部に区別するという意見は、私も同意見で、以下の記事にその趣旨を述べました。
「経済的自立」を確立する – ゴキゲンLifeShift (gokigenlifeshift.com)
BOBOSについては元になる「アメリカ新上流階級 ボボズ」を読んで、「BOBOのライフスタイルは資本主義における消費の最新モデルに過ぎない」と論破しましたが、橘氏は、ミニマリズムに先駆けて登場したBOBOを上記のように評価して、「成功したミニマリスト」の代表例として扱っているようです。
こうした新しい潮流は判別が難しいので、橘氏のその「成功したミニマリストの代表例としてのBOBOS」という解釈を受け入れるとすれば、上記で要約した内容には、自分は親近感を覚えました。
なぜなら、自分の現在位置がまさに当てはまるからです。
アーリーリタイアを達成した現段階で、自分も「悠々自適で遊び暮らす」つもりはなく、75歳まで持続可能な社会貢献を検討しています。
FI後は、預貯金の年金化や支出の自動支払い化などで、なるべく「お金にとらわれない生活」を目指しています。
加えて、個人フリーエージェント活動を始めるつもりで、自分の裁量で、「嫌なやつの仕事を断り、好きな人とだけで働き、ゴキゲンにストレスない」形で、労働を継続します。
最終的には、シニア起業で「社会活動を通して、大きな評判を手に入れる」目標をもっている、と
自分の現在を表現することができます。
この「経済的に自立した人間のミニマリズム」運動という解説は、このブログを始めるときの決意文において「アフターコロナに激変するであろう、就業・転職の環境変化において、次世代の水先案内人になれたらいいなと考えています。これは、たぶん次世代の働き方は、社歴より、プロジェクト歴の時代になる、という確信」という宣言を、別の形で表現してくれていると感じました。
参考
はじめに アーリーリタイアして「ゴキゲンLIFESHIFT」を始めた理由について – ゴキゲンLifeShift (gokigenlifeshift.com)
LIFESHIFTした先の方向性、「経済的に独立して、好きな活動を通して、大きな評判を手に入れる」こと
ということで、アーリーリタイア後の今後の活動として、そろそろ「好きな活動をして大きな評判を手に入れる」パートに進もうかと考えています。
冒険してシニア起業に飛び込むのか、フリーエージェント的な活動で複数の会社と関わるのか、しばらくはその2つを懸案していくつもりです。
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