このブログではフランクリン・R・コヴィー博士の名著「7つの習慣」を、自分なりに読み解く企画を進めています。
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名著「7 つの 習慣 スティーブン コヴィー」でゴキゲン×ヤリガイのある人生を手に入れる 総集編 – ゴキゲンLifeShift (gokigenlifeshift.com)
7つの習慣 前回までのまとめ
第1部 私的成功
第1回
「7つの習慣」で「ゴキゲン×ヤリガイ」のある人生を手に入れる 1 – ゴキゲンLifeShift (gokigenlifeshift.com)
第2回
第1の習慣「主体的である」 名著「7つの習慣」で「ゴキゲン×ヤリガイ」のある人生を手に入れる 2 – ゴキゲンLifeShift (gokigenlifeshift.com)
第3回
第2の習慣「終わりを思い描くことから始める」 名著「7つの習慣」で「ゴキゲン×ヤリガイ」のある人生を手に入れる 3 – ゴキゲンLifeShift (gokigenlifeshift.com)
第4回
第3の習慣「最優先事項を優先する1」 名著「7つの習慣」で「ゴキゲン×ヤリガイ」のある人生を手に入れる 4 – ゴキゲンLifeShift (gokigenlifeshift.com)
前回は「人生において、人生の大事を、小事の犠牲にしてはならない」というテーマで、第3の習慣「最優先事項を優先する」を紹介しました。
具体的な方法としては、特に、「危機が減る、緊急事態に予測対応できる第2領域活動」を詳しく説明しました。第2領域を実践するためのコツの一つが「ノーを言う力を養うこと」でした。
今回は、もうひとつのコツを徹底解説します。
それは、もしかしたら、あなたの人生を変える最も効果的な方法かもしれません。
タスクの達成には2つの方法がある
それが緊急であろうとなかろうと、重要であろうとなかろうと、すべてのタスクを達成する方法は2つしかありません。
自分の時間を使って実行するか、
人に任せて他人の時間を使って実行するか、の2択です。
この2つを両方使いなして大きな結果を残す人がいる一方で、人に任せることが苦手な人は多いものです。
かくいう自分も「7つの習慣」に出会うまでは、圧倒的に「自分で効率的に仕事をすること」を優先でやっていました。
なぜなら、「人に任せる」ことは、効率が悪いと思っていたからです。
「人に任せる」ためには、事前に上司に人をもらう根回しをして、面談をして採用を決め、新しく来た人にゼロから段取りを説明して、自分でやって見せて、その人にやってもらう作業を監督して、やってもらった作業を自分で確認して、問題あれば指摘してやり直してもらい、問題なければ労いの言葉をかける。
ふー--!
面倒過ぎる!
だったら、自分でやったほうが早い!と思ってました。
当時は、自分がやった方が、時間も短く、成果もあげられると、心の底から思ってました。
でも、このやり方の限界を早々に味わうことになりました。
ゲーム事業を会社にプレゼンして、認められて、意気揚々と制作に乗り出したのですが、はじめてのゲーム制作の現場は、泥沼のような消耗戦でした。スーパーファミコンとPSが入れ替わるゲーム業界が最も熱い時期の話です。ゲーム開発には億単位のお金が投資されていました。
競争相手が1人から2人なら、自分の1馬力の底力を上げれば対抗できます。
でも50人のチーム、100人のチームが相手になったら、たったひとりでは対抗できないでしょう。
自分だけで勝手に責任を背負い込み、必死で朝9時から翌朝4時まで深夜残業が半年続き、疲労とストレスを抱え込んでしまっていました。すべてを消耗して燃え尽きるのは目に見えていました。案の定、最後は身体を壊し、腸閉塞で入院してしまいました。
30代の前半のことです、周りを見れば人に任せて、チームを運営して、和気あいあいと仕事をしている同期がいました。優秀だと評価される人ほど、自分で働くよりも、チームで働き、成果を上げていました。
その時に「7つの習慣」を読んで、自分に足りなかったスキルを思い知りました。
そこで、必死にこの「人に任せること」ノウハウを学びました。
まさに私の人生を変えた最も効果的な方法が、このデリゲーションだったのです。
人に任せることができれば、自分だけで行うより、大きな成果をもたらすことができる。
「ひとにしてもらう」というスキルは、人生においてとてつもない意味を持っていました。
その後の自分の飛躍を考えれば、私の人生で最も効果的なスキル習得だったと思います。
この「人に任せるスキル」には、名前があります。
デリゲーション(delegation):委任、代表任命、代表団を意味する
これも30年前に「7つの習慣」が持ち込んだものだと記憶しています。現在では、多くの人は「デレゲーション」と発音すると思いますが、「7つの習慣30周年版」に準じて、ここでは「デリゲーション」に統一します。
いまやデリゲーションは、ビジネス界の人事・労務では「上司が部下に自分の仕事の一部を移管して任せること」として、社内の「権限委譲」では当たり前のコンセプトとなりました。
昨今では一歩進めて、デリゲーションを日常化するための体制づくりのために、「権限移譲主体の上司ー部下の人間関係をつくる方法」として、「Empowerment=自立できるよう力を与える」という概念に発達しています。
Empowerment:権限の委譲
企業において従業員の能力を伸ばすためや、開発援助において被援助国の自立を促進するために行われる。 三省堂「大辞林」より
人に任せる、任せるに足る人間関係をつくり、任せるべき人を全力で支援する。このデリゲーションとエンパワーメントは、時代のキーワードと言って過言ではありません。
ちなみに自分が以前に勤めていたマイクロソフトの企業ビジョンは、以下のものです。
Empower every person and every organization on the planet to achieve more.
地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする
Mission & Value , Culture – MSD(マイクロソフトディベロップメント) – Microsoft College Recruiting Information
ひとに任せて、そのひとが、より多くのことを成し遂げるための「支援」をする。
Empowermentの概念を会社の最上位に掲げて、全人類の発展のためにつくそうという強い意志を感じます。こうした真摯な想いに吸い寄せられるように、転職した気がします。
特に教育部門では
Empower every Students on the planet to achieve more.
地球上のすべての子供たちが、より多くのことを達成できるようにする
という高潔な目標のために、チーム全員が真摯に行動していました。
デリゲーションを前提とした、この組織目標はとても心に響きました。
自分の活動にまったく悩みがなく、この言葉にまっすぐ行動できるという意味で、「企業ビジョン」の代表例だと思います。
人に任せる、デリゲーションと、任せるに足る人間関係をつくるエンパワーメント、任せるべき人を全力でバックアップする、エンパワー、これらが、「ひとにしてもらう」というスキルのキーワードになります。
私的成功と公的成功の橋渡しをするデリゲーション
「7つの習慣」は大きく、前半の第1の習慣~第3の習慣の「私的成功」と、「公的成功」と呼ばれる第4~第7の習慣に区分されますが、デリゲーションは、その私的なパートと、公的なパートのちょうど、橋渡しになるスキルと考えられています。
コビィー博士は、デリゲーションは、自分が「スタッフ」で働くか、「マネージャー」として働くかの岐路であると、指摘しています。
「デリゲーションできる能力の有無が、マネージャーとして働くか、もしくは一スタッフで働くかを区別する決定的な違いなのである」
スタッフは、1時間働いて1単位の出力という結果を生産する。
それに対して、マネージャーは、デリゲーションを活用して、同じ1時間で10単位、50単位、あるいは100単位の結果を生産できる、と説きます。
「マネジメントとは、基本的に、テコの支点をずらすことだ。つまり、効果的なマネジメントの鍵を握っているのは、デリゲーションなのである」
マネージャーとは相互依存の魔法を使って、黄金の卵を生産する人のことなのです。
ですから、自分が30代前半でこの岐路に気付けたことは、大きかったのだと思います。
ちなみに、マネージャーのなかにも、2つの種類が存在し、それは、デリゲーションのレベルによって区分けされます。
1.使い走りのデリゲーション
このレベルのデリゲーションしかできない上司は「マイクロ・マネジメント」タイプと呼ばれます。
自分に対する「報連相」だけを強調して、チームの成果が出ない上司がいます。それは、このデリゲーションのレベルが低い場合に起こります。
「仕事のやり方をいちいち指定して管理しようとするから、結果に対する責任も自分で全部背負いこむことになる」
このマイクロ・マネジメントのやり方は、上の図の「スタッフ」の入出力に近い結果しか出すことができないのは自明です。任せた人間の行動をすべて監視し、すべてを指示しているなら、行動は1人分と同じで、出力は1人分しか出せないからです。
これに対して、より効果的な方法があります。
2.全面的なデリゲーション
全面的なデリゲーションの最大のポイントは「手段ではなく、結果を重視する」ことです。
つまり、託した人に手段を自由に選んでもらい、結果もその人に持たせるのです。
この状況をつくるまでの時間はかかりますが、その分、時間が経てば経つほど、支点が託す人のサイドによっていき、マネージャーの側から離れていきます。
では、どうやって託す人と一緒に、この状況をつくるかですが、「結果を重視する」のですから、そのためには、事前に出すべき出力のための相談をします。
企業では、これをよく「NIGIRI」と言っていますが、どうも結果のことだけを言っていることが多く、この5項目をすべて抑えることが重要だと思います。
それぞれのコツをメモしておきます
①望む成果
完成してみると、結果が思わぬものになっている場合があります。託す人と託された人のイメージのかけ違いが問題です。そうならないためには、時間をかけて、お互いの納得するまで「成果」や「結果」をイメージ合わせする必要があります。
コビィー博士は定性的に「具体的な文章で表現する」ことを勧めています。
最近では定量的な「KPI(重要業績評価指標: key performance indicators)」を決める場合が多いです。もちろん、期限も明確にしましょう。
②ガイドライン
手段は任せるのですが、守るべき基準や犯してはいけないルールは明確にします。
途中段階において、ある程度の失敗は認めるべきですが、経験上、失敗する可能性があるなら情報を与えるべきです。
ただし「すべきこと」を指示しないように!というのが、コヴィー博士のご指導です。
「任せる相手に最後までやらせたいなら、ガイドラインの範囲内で必要なことを自由にやらせることが大切だ」
③リソース
任せる相手に託せる、人員、資金、技術、組織、リソースを明確にしておくことも重要です。
リソースの開示で、マイクロソフトに転職して驚いたのは、「必要ならば、社長を含めて誰でもあなたのプロジェクトのために活用することができる」という権限移譲がされることでした。
最上位の上司を活用してプロジェクトを実行するというデリゲーションが実施されるのです。逆に言えば、必要な時に社長に登板してもらわないで、プロジェクトが失敗した場合、叱責されることになります。
日本型企業の場合、これらのリソースの開示が明確でなく、無駄に調整時間をかけている気がします。
人員、資金、技術、組織など、もっと細分化して、権限移譲を徹底すべきなのでしょう。
④アカウンタビリティ
成果の基準や報告の時期、評価のタイミングを明確にすることを指しますが、最近のDXの流れの中では、この部分の「可視化」が重要と言われています。
目的は「即断即決」です。状況を評価基準に基づいて「見える化」し、すばやく判断するのです。
データベース経営というのは、この即断即決のための経営数値の可視化・経営陣と現場の情報の共有化をベースにしていることが多いと思われます。エンパワーの次の時代の経営手法なのでしょう。
⑤評価の結果
評価の結果で、ここ最近、強調されるのは、モチベーションです。
金銭的+精神的な報酬の結果として、託された人の「モチベーション」の向上が、その後の組織パフォーマンスに影響することがわかってきたのです。
そのプロジェクト単体の結果だけでなく、その結果が、組織の全体の結果にどのようにつながるのか、その人のステージが上がるのか、より大きなプロジェクトを任せてもらえるようになるのかなど、情熱に火をつけるような「評価の結果」を与えることが大事になっています。
以上、第3の習慣「最優先事項を優先する」における「デリゲーション」を特別にフューチャーして解説しました。
この「ひとにまかせる」スキルこそが、成果を出す秘訣だと信じているからこその回になりました。
次回から、公的な成功のパートに入ります。ぜひ、お付き合いください。
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